伝説の「スケッチ」を造る小規模ボデガスペインの現在の旬はリアス・バイシャス。昨年11月末から半月近くの現地訪問で、それを実感しました。 11月23日に訪ねたボデガス・フォルハス・デル・サルネス。リアス・バイシャスのサブゾーン、バル・ド・サルネスに拠を構える家族経営の小規模ボデガです。オーナーはロドリゴ・メンデス。本業はムール貝などの養殖用いかだのフロートを作る会社です。先祖代々、家族用のワインを醸していましたが、ロドリゴが天才醸造家ラウル・ペレスと知り合い、本格的にワインビジネスに参入しました。 このボデガスが世界中のスペインワインファンから注目を集めたのは、なんと言っても『スケッチ』の存在でしょう。ラウル・ペレスの名を伝説にしたワインは、ここで造られます。海岸そばの石塀に囲まれた畑に植えられるアルバリーニョから造られますが、ほかのアルバリーニョとは一線を画すワインです。 伝説のレストラン「エル・ブジ」シニア・ソムリエのダビット・セイハスも、著書の中でスケッチはラウル・ぺレスが造る最高品質ワインの一つ。特別な醸造法で造る素晴らしいアルバリーニョで、「人生で出会った最高のワインの一本」とコメントしています。 生産本数も800本。非常に少なく、スペイン国内外で入手困難なワインとして知られ、スペインの有名レストランでラッキーなら飲める。そんなワインです。 実際には700リットルの樽2つで造られるワイン。アッサンブラージュ後、1600本のボトルに詰められ、800本がラウル・ペレスの名でスケッチとしてリリースされ、残りの800本がフォルハス・デル・サルネス名でゴリアルド・ア・テレイラとしてリリースされます。 この日も、タンクや樽から、いろいろなワインをテイスティングさせてもらいました。ラティーニョというまったく聞いたことのない絶滅が危惧される白ブドウから初めて造ったワインもありました。このブドウを栽培しているのはもちろんここです。一樽(500リットル)やっとできる量とのこと。樹齢はゆうに100年を超えており、自根のピエ・フランコとのことです。 ピサード・コン・ピエは赤ワインの造り方で造ったアルバリーニョ。体重の軽い子供が発酵槽で足で踏み、ブドウを破砕します。その大役はロドリゴの二人のジュニアが担当したそうです。こちらもリリースが楽しみです。100年以上たった栗の木による大樽の古樽で熟成するアルバリーニョなど興味深いワインがたくさんありました。 「誰もがやっていないこと」「誰もが造っていないワインを造りたい」とロドリゴは言います。リアス・バイシャスで2%ぐらいのシェアしかない黒ブドウにも注目しています。その昔、リアス・バイシャスにも赤ワインがかなりありました。赤ワイン復活に、ラウル・ペレスとともに力を入れています。カイーニョ、ローレイロ、エスパデイロといった絶滅が危惧される品種の復活に特に力を入れています。 ”THE FINEST WINES OF RIOJA AYD NORTHWEST SPAIN” という本でもロドリゴ・メンデスはリアス・バイシャスの優良生産者として紹介されています。”ゴリアルド・エスパデイロ”は ”Ten Best Reds from Galicia” で選ばれた10のワインの中でさらにベストに輝きました。ア・トラベやエル・ペカドといったラウル・ペレスのお宝を抑えてのベストワインです。 ロドリゴはアルバリーニョも赤ワインたちもしっかり熟成の効くワインを造りたいと言っています。熟成したワインを飲めばすぐわかるのですが、素晴らしい酸を持ったワインを造ります。 大量生産型のアルバリーニョとはまったく違う高品質のワインが生まれます。日本ではリアス・バイシャスのワインを『若飲みでシャバシャバしたワイン』なんて言う方がいらっしゃいますが、それは大量生産型のアルバリーニョであって、このフォルハス・デル・サルネスのワインこそが真のアルバリーニョの姿なのです。 ボデガ見学後、目の前に海が広がるレストランでフォルハス・デル・サルネスのワインを十数本飲みました。素晴らしいワインばかりでした。そしてなんと、ここリアス・バイシャスでピノ・ノワールも造っているのです。もちろん飲ませてもらいました。素晴らしい味わいでちょっと驚きました。ビノ・ノワールは今年、日本に到着する予定です。 ボデガス・フォルハス・デル・サルネスやボデガス・ヘラルド・メンデスのワインをぜひお飲みください。本当のリアス・バイシャスのアルバリーニョはこんなにもおいしいのです。 (2012年2月9日 読売新聞)
■筆者プロフィル
新井 治彦
「ワイナリー和泉屋」社長。1958年生まれ。98年からインターネットでのワイン販売を開始。スペインワインに特化し、40以上のボデガのワインを自社輸入・販売する。コマンドリー・ド・ボルドー東京会員、カバ振興協会功労騎士YOLセレクション第5弾発売『スペインの旬 アルバリーニョを産するガリシア』白2本と赤1本のお買い得3本セット(税込み 8400円) 白1本赤2本の特別3本セット(税込み 17304円)
左から、「ゴリアルド・ア・テレイラ [2008] フォルハ・デル・サルネス」、「ゴリアルド・カイーニョ [2008] フォルハス・サルネス」、「ゴリアルド・ローレイロ [2008] フォルハス・サルネス 」
YOLがワイナリー和泉屋のバイヤー新井治彦さんとコラボレートして組んだ「YOLセレクション」の第5弾。ワイナリー和泉屋の特設ページで購入できるセットは2つあります。 今回、光を当てたのは、スペインで最も旬の産地といわれるガリシア。スペイン北西部に位置し、大西洋の影響を受ける冷涼な産地です。白ワインのアルバリーニョは世界的にブレイクしています。 ニューヨーカーに人気の1つ星フレンチ「イレブン・マディソン・パーク」や全米で最も予約困難な「フレンチ・ランドリー」のバイ・ザ・グラスにも常備されています。世界の優れたワインをそろえるこれらのレストランがグラスで供するのは、ソムリエが品質を認め、舌の肥えたお客にも人気があることを意味します。 アルバリーニョの魅力は、日本人の好きな魚介類にあわせやすいこと。きれいな酸とミネラル感に縁取られ、飲み飽きず、変化が楽しめること。ロドリゴ・メンデスの手がけるボデガス・フォルハス・デル・サルネスは、高樹齢のアルバリーニョを伝統的手法で醸す造り手。スペイン白ワインの最高峰に位置するラウル・ペレスのスケッチを一緒に造っています。 今回は、世界が捜し求めるそのスケッチと同じワインをゴリアルド・ア・テレイラに赤ワイン2本をあわせた3本セットが1万7304円。土着品種を使った赤も、ブルゴーニュのピノ・ノワールを連想させる典雅な味わい。安くはありませんが、将来のお宝となるワインです。 ひとまず、ガリシアに入門したいという愛好家には、入門編と中級編のアルバリーニョに土着品種3種のブレンドで造る赤ワインをあわせた3本のお買い得セットを。8400円で、旬のガリシアの涼風を感じることができます。つまらないブルゴーニュを買うよりも、数倍以上の満足感を得られます。
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