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(6)一流のバレエ 体育館で

 一晩で華やかな舞台に変わった体育館。美しい衣装をまとってしなやかに踊る姿に、子どもたちの目がくぎ付けになる。昨年11月18日、神奈川県大和市の市立緑野小学校。この日開かれた芸術鑑賞教室は、日本を代表するバレエ団の公演だった。

 松山バレエ団(東京都港区)が、文化庁の次代を担う子どもの文化芸術体験事業に参加し、全国の小・中・高校での巡回公演を始めたのは1997年。バレエ人口のすそ野を広げたいという思いからで、今では毎年10校前後を回っている。

 同小での演目は「くるみ割り人形」。団員約60人に教職員、保護者のボランティア約30人も加わり、前日から舞台を仕込んだ。普段の5分の1の広さだが、今回は全2幕を上演し、流れは本舞台と遜色ない。バレエを初めて見る子がほとんどなので、準備は入念に行われた。

 子どもたちとの触れ合いを大切にしようと、今回は6年生の女子4人が、妖精役で出演した。7月に団員の手ほどきを受けてから、こつこつと練習。この日、4人が登場すると、ひときわ大きな拍手が起こった。

 その一人である石川芽衣さん(12)は「ものすごく緊張したけど楽しかった。給食を大盛りにして、みんなが応援してくれたのもうれしかった」と笑顔を見せた。練習を見守った大原礼佳(あやか)教諭(27)は、「プロと一緒の舞台に立つなんて、得難い体験をしたね」とねぎらった。

 「子どもは純粋に表現をとらえてくれるのでやりがいがある」と、主役のクララを演じた同バレエ団プリマバレリーナの佐藤明美さん。「客席との距離が近い分、心を込めて誠実に踊った。心が浄化されたよう」と話した。

 バレエミストレス(演出補佐)の(えだ)まゆみさんは「テクニックを見せつけるのではなく、人に対する思いやりや豊かな感情を表現するこうした公演が、文化芸術の原点。これを機に舞台芸術に興味を持ってもらえれば」と期待を込めた。

 担任の松下やすみ総括教諭は、「映像作品では伝わりにくい本物の感動を味わってほしかった。舞台に立った女子は、自信をつけて前よりも積極的になった。これからもプロの教育力を活用していきたい」と語る。

 本物に触れる体験が、子どもたちの感性を豊かに育てていく。(保井隆之)

 次代を担う子どもの文化芸術体験事業 小・中学校などで一流の文化芸術団体による巡回公演を行ったり、芸術家を派遣したりする文化庁の事業。子どもたちの発想力、コミュニケーション能力の育成と、将来の芸術家育成、芸術鑑賞能力の向上が目的。今年度巡回公演を行うのは、バレエやオーケストラ、演劇など97団体。

2012年1月25日  読売新聞)
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