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作者の言葉

作者の言葉

2006年夏から翌年春にかけて、わたしは読売新聞に、3匹のネズミ一家の移住の旅の物語を連載しました。

 「川の光2 タミーを救え!」はその続篇(ぞくへん)です。ネズミの兄弟タータとチッチは、前作よりはるかにスケールの大きな冒険に身を投じます。ふたりは敢然として大都会東京を横断し、犬のタミーの救出に向かうのです。

 友情で結ばれた大小さまざまな動物たちが登場し、ふたりのこの困難な旅を助けてくれるでしょう。合言葉は、「川の光を求めて!」。

松浦寿輝さんインタビュー

「幸せな体験もう一度」

作家の松浦寿輝(ひさき)さん(57)の連載小説「川の光2--タミーを救え!」が、来月1日の朝刊から始まる。前作で武蔵野の川べりを冒険したネズミの家族たちが、今回は東京大横断に挑む。新しい仲間が増え、スリルも楽しみも2倍に広がりそうだ。

 「動物たちの物語は、前作で最後だと思っていました。でも時間がたつにつれ、あの幸せな体験をもう一度味わいたくなりました」

 前作「川の光」は、2006年7月から翌年4月まで計220回本紙に連載された。開発によって川辺の住みかを奪われたネズミのチッチとタータたちが、安住の地を求めて旅する姿を描いた。中央公論新社から単行本が出版され、一昨年にはNHKでアニメ化もされている。

 今作では、何と彼らの友達でゴールデン・レトリーバーのタミーが、悪い人間に捕まってしまう。ネズミたちは、東京横断の救出の旅に出るようなのだが...。松浦さん、あんな愛らしいタミーを、つらい目には遭わせませんよね?

 「それは、どうでしょうね。タミーは我が家の愛犬がモデルなので、あまり悲しい思いはさせたくないですけれど」

 物語の新たな仲間として登場するのは、クマタカのキッドだ。執筆にあたり、別の種類のタカを飼っている知人を訪ねた。革手袋をはめ、実際にタカを左手にのせてみたという。

 「眼光鋭く、爪をたてれば今にも肉を突き破って骨までえぐられそうでした。この非常に野性的な動物を、人間はタカ狩りのため飼ってきた。人間との不思議な縁にもひかれました」

 空の王者の末裔(まつえい)ながら、性格の未熟なキッドがほかの動物との触れ合いを通してどう成長するかも見所だ。

 「生命とは何か、自然とは何か、この世界で生きるとはどういうことなのか。よりスケールの大きな空間の中で、読者と一緒に探してゆきたい。勇気と誇りを持った動物たちの姿が、人間の営みのあり方も考えさせるような新聞連載になればと思っています」

 詩人や批評家、仏文学者と様々な顔を持ち、2005年に小説『半島』で読売文学賞に輝くなど、多くの受賞歴を持つ。来春には東京大学教授の職を辞め、文筆に専念する。「節目の連載となりそうです」

 柔らかな表情に、生気がみなぎる。




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