『胡桃の中の世界』 澁澤龍彦著
中世の不可思議な魔境
タイトルの小編を含む13編のエッセーは、その一つひとつが、中世社会の不可思議な魔境をのぞくような刺激に満ちている。
表題エッセーは、「入れ子」の無限構造に、大小の宇宙観を見る。目に見える世界とは全く異なる世界があるのだと、想像力をたくましくさせてくれる。
また、「宇宙卵について」は、イタリア・ルネサンス時代の画家ピエロ・デッラ・フランチェスカが描いた祭壇画の聖母の頭上の卵を機に、「両性具有」や「賢者の石」など、あらゆる文献をひき、めくるめく怪奇世界に引き込む。
「サディスト」の語源であるフランスの小説家サドを始め、世界中の異端文学や怪奇
現代も20〜30代の読者を引きつけるというから、抑圧的な現代に生きる若者にとって、ある種の知的欲望のはけ口になっているのだろう。
(井)
◇
1974年刊。84年刊の旧版と2007年の新版を合わせた河出文庫版は6万1000部。780円。
(2011年12月7日 読売新聞)
- 『大名の日本地図』 中嶋繁雄著 (3月7日)
- 『巴里の空の下 オムレツのにおいは流れる』 石井好子著 (2月29日)
- 『動物化するポストモダン』 東浩紀著 (2月22日)
- 『スローカーブを、もう一球』 山際淳司著 (2月15日)
- 『国語入試問題必勝法』 清水義範著 (2月8日)
- 『ブリューゲルへの旅』 中野孝次著 (2月1日)
- 『天平の甍』 井上靖著 (1月25日)
- 『わたしが・棄てた・女』 遠藤周作著 (1月18日)
- 『心に太陽を持て』 山本有三編著 (12月28日)
- 『O・ヘンリ短編集』 大久保康雄訳 (12月20日)
ピックアップ
トップ
|
|