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『心に太陽を持て』 山本有三編著

心に響く「人間への希望」

 心に太陽を持て。/あらしが ふこうと、/ふぶきが こようと、/天には黒くも、/地には争いが絶えなかろうと、/いつも、心に太陽を持て。/(以下略)

 ドイツの詩人、フライシュレンの詩「心に太陽を持て」をタイトルに取り、巻頭にも置く本書が刊行されたのは1935年。戦争の影が近づく中、「子供たちの心の糧となる本を」と出された「日本少国民文庫」の第1回配本作だった。

 人はどう生きるべきかをやさしく説いた逸話を世界から集め、その後の改訂を経て、現在は21編を収める。夢をあきらめず、製本屋の店員から科学者になったファラデーや、パナマ運河開設に尽力した2人のアメリカ人の物語などは、大人の心にも十分響く。

 再び立ち上がろうとする人間の力を信じたい――。今年は、そう思った人も少なくないはずだ。フライシュレンの詩は、NHKの朝ドラ「おひさま」で、主人公の戦死した兄の好きな作品としても朗読され、話題になった。本書と詩に共通するのは人間への希望であり、おそらくそれが、読み継がれる理由でもある。(雅)

 1935年、新潮社から刊行。69年にはシリーズを離れた単行本として出版され、81年に新潮文庫入り。文庫は現在、32刷23万4000部。

2011年12月28日  読売新聞)

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