『心に太陽を持て』 山本有三編著
心に響く「人間への希望」
心に太陽を持て。/あらしが ふこうと、/ふぶきが こようと、/天には黒くも、/地には争いが絶えなかろうと、/いつも、心に太陽を持て。/(以下略)
ドイツの詩人、フライシュレンの詩「心に太陽を持て」をタイトルに取り、巻頭にも置く本書が刊行されたのは1935年。戦争の影が近づく中、「子供たちの心の糧となる本を」と出された「日本少国民文庫」の第1回配本作だった。
人はどう生きるべきかをやさしく説いた逸話を世界から集め、その後の改訂を経て、現在は21編を収める。夢をあきらめず、製本屋の店員から科学者になったファラデーや、パナマ運河開設に尽力した2人のアメリカ人の物語などは、大人の心にも十分響く。
再び立ち上がろうとする人間の力を信じたい――。今年は、そう思った人も少なくないはずだ。フライシュレンの詩は、NHKの朝ドラ「おひさま」で、主人公の戦死した兄の好きな作品としても朗読され、話題になった。本書と詩に共通するのは人間への希望であり、おそらくそれが、読み継がれる理由でもある。(雅)
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1935年、新潮社から刊行。69年にはシリーズを離れた単行本として出版され、81年に新潮文庫入り。文庫は現在、32刷23万4000部。
(2011年12月28日 読売新聞)
- 『大名の日本地図』 中嶋繁雄著 (3月7日)
- 『巴里の空の下 オムレツのにおいは流れる』 石井好子著 (2月29日)
- 『動物化するポストモダン』 東浩紀著 (2月22日)
- 『スローカーブを、もう一球』 山際淳司著 (2月15日)
- 『国語入試問題必勝法』 清水義範著 (2月8日)
- 『ブリューゲルへの旅』 中野孝次著 (2月1日)
- 『天平の甍』 井上靖著 (1月25日)
- 『わたしが・棄てた・女』 遠藤周作著 (1月18日)
- 『心に太陽を持て』 山本有三編著 (12月28日)
- 『O・ヘンリ短編集』 大久保康雄訳 (12月20日)
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