『国語入試問題必勝法』 清水義範著
出題者の「仕掛け」を暴く
1980年代から90年代にかけて著者は「パスティーシュ(文体模倣)の旗手」と呼ばれ、キレにキレまくっていた。
機械の取扱説明書、論文の序文、新聞のテレビ番組欄、英語の教科書、丸谷才一、司馬遼太郎――と、世の中の様々な文章の「型」をまね、ちゃかし、爆笑必至のユーモア小説に仕上げていた。
一連の「清水パスティーシュ小説」の中でも、最も人気が高い作品の一つが表題作。国語の入試問題文について、登場人物の家庭教師は「理解する必要はない」と断言し、解答欄の選択肢を読むだけで正答を導き出す法則を生徒に授けていく。記者も中学時代に読んだ時、その快刀乱麻の解説に感動し、模試で実際に「長短除外の法則」を使ってまずまずの成果を上げた。
著者は、「入試問題を作る人の『ひっかけてやれ』という“仕掛け”を暴き出したところが痛快だったようです」と人気の理由を自己分析する。「あの小説が出て以降、問題の作成者を刺激してしまったようで、『清水対策』として問題の質が変わってきたと聞きました」と笑っていた。(森)
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1987年、講談社刊。17刷7万7000部。90年に文庫化され、38刷32万800部。
(2012年2月8日 読売新聞)
- 『歴史を考えるヒント』 網野善彦著 (6月13日)
- 『芽むしり仔撃ち』 大江健三郎著 (6月6日)
- 『一勝九敗』 柳井正著 (5月30日)
- 『チャイコフスキー・コンクール』 中村紘子著 (5月23日)
- 『コリアン世界の旅』 野村進著 (5月11日)
- 『超芸術トマソン』 赤瀬川原平著 (4月25日)
- 『バーボン・ストリート』 沢木耕太郎著 (4月18日)
- 『本当は恐ろしいグリム童話』 桐生操著 (4月13日)
- 『卍(まんじ)』 谷崎潤一郎著 (4月4日)
- 『新明解国語辞典』第七版 山田忠雄ほか編 (3月28日)