ジュネーブ「国際高級時計展」
ヒット作復刻「原点回帰」
高級腕時計の新作が発表される見本市「国際高級時計展(SIHH)」が1月半ば、スイスのジュネーブで開かれた。
22回目の今回は、カルティエやIWCなど18社が出展。新作の傾向や高級時計市場の動向などを、現地で取材した時計ジャーナリストの並木浩一さんに報告してもらった。
スイスでは毎年、二つの大きな時計見本市が行われる。一つが3月に開かれる「バーゼルワールド」。個人の独立時計師から有名ブランドまで、世界中から2000社近くが出展する。もう一つがSIHH。出展社数を絞り、高級路線を特徴としている。
今回のSIHHでは、過去に発表したヒット商品を復刻するブランドが目立った。欧州の経済危機が影を落とす中、中国など新興市場での販路拡大を図るため、ブランドを象徴するモデルを通し、自社の特色を浸透させようとした。
カルティエは、1919年に発売され、同社の腕時計の代名詞とも言える「タンク」で新モデル=写真〈1〉=を発表した。第1次世界大戦で登場した仏製戦車をモチーフにデザインした角形時計。竜頭をケースの縦枠に組み込み、洗練された雰囲気に仕上がった。
オーデマ・ピゲは、発表40周年となる「ロイヤルオーク」で、当時のデザインを再現したモデル=同〈2〉=を見せた。ケース素材にステンレススチールを使い、高級スポーツ時計の先駆けとなった歴史的な時計だ。ヴァシュロン・コンスタンタンは、
もちろん、複雑な機能を満載したSIHHらしい新商品も数多く発表された。モンブランは、1000分の1秒を計測できる超複雑機構を採用した新作=同〈4〉=を発表。A・ランゲ&ゾーネは、「ランゲ1」の新作=同〈5〉=に、うるう年を含めて月末の日付修正が不要な永久カレンダー機能を盛り込んだ。月の満ち欠けを表示するムーンフェイズ機能を搭載したジャガー・ルクルトの新作=同〈6〉=は、老舗らしいクラシックなデザイン。
オフィチーネ・パネライは、ケースからブレスレットまで黒いセラミック素材を採用したモデル=同〈7〉=で、男性的な力強さを印象付けた。IWCは、カーキグリーン色の布製ストラップを使いミリタリー風の新作=同〈8〉=を発表した。
「原点回帰」とでも呼びたくなる、自社の特色を見つめ直す商品が目立った今年のSIHH。派手さはないが、手作業の痕跡や機能美など機械式腕時計が持つ本来の魅力を堪能できる商品が増えた。
なみき・こういち 1961年生まれ。雑誌の編集者、記者として90年代から時計業界を取材。2010年から、大同大学教授(メディア論)。著書に「腕時計のこだわり」(ソフトバンク新書)など。
「ヨミウリオンライン」(http://www.yomiuri.co.jp/collection/)では、多彩な写真と記者ブログ「コレクション@小町」でコレクションの様子を紹介しています。
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