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サーキット徒然草

156周目:拝啓、てるてる坊主殿

 久しぶりの原稿書きだ。

 敬愛する植木等が亡くなったとあって、喪に服していたのだ。

 てなこと云って、ホントは編集雑務が忙しかっただけなのよ。

 今週末の土曜日(4月21日)には、栃木のツインリンクもてぎで今年も《ブリヂストン・インディ・ジャパン300マイル》が開かれる。オイラみたいに昼夜逆転した引き篭もり編集作業をしてるとサーキットに行ってる余裕なんてないのだが、運良く今年は行けそうだ、というより、無理してでも行って気分転換したいところだ。だって先日16日に一冊校了下版したばかりなのに、次の号は25-26日が校了なんだもん。週刊誌つくってるんじゃないって。印刷屋サンの都合を重視したいわゆる「連休進行」ってやつだ。たまにはサーキットに行って、オーバー300km/hで突っ走るマシーンの排気音を聴きながらプレスルームで居眠りでもしたい(ウソですよ)。

 見所はいくつもあるけど、去年あたりからシャシー/エンジン/タイヤが全車一緒になったせいで、チーム力の差がはっきり見えてきてしまった。具体的に言えば、ペンスキー(サム・ホーニッシュJrとエリオ・カストロネヴェス)とガナッシ(ダン・ウェルドンとスコット・ディクソン)の4車がガチガチ本命で、アンドレッティ-グリーン(トニー・カナーンとダリオ・フランキッティ)が辛うじて食らい付くか、といったところ。それ以外のチーム&ドライバーは、上位陣が潰れないかぎり、可能性は薄い。ただし、オーバル・トラックでのレースはイエロー時の作戦次第で、ギャンブル大成功という番狂わせがときどき起こる。最近そういったレースがないので、ここはひとつ、もてぎで大番狂わせの結果を期待したい。人気女性レーサーのダニカ・パトリック(我々はダニ子と呼ぶ)とかが勝っちゃったら、世界中が大騒ぎとなること必至だ。

 もちろん、「サラたん」ことサラ・フィッシャー嬢でも、我が日本代表の松浦孝亮の優勝でも大歓迎だけど。まぁ、どうせだったら、いつもとはちょっと違った結果になってほしい。

 ただ、ちょっと気掛かりなのは天気だ。さっき夜のニュースで半井小絵さんが、週末の天気は全国的に崩れそうだと言っていた。彼女が嘘をつくはずはない。

 知ってのとおり、オーバル・トラックでのレースはちょっとでも雨が降ると、やらない。滑って危険すぎるからだ。通り雨とか、好天の兆しがあれば、人工的にコースを乾かしてでもレースすることになるが、午後ずっと雨なら、翌日に延期するしかない。2000年のもてぎCART戦がそうだったっけ。

 延期になっちゃうとオイラは居続けできない。校了作業直前の一日は貴重なのだ。まぁもし土曜が雨になったら、併設のコレクションホールで歴代インディカーの珍車群でも眺めて引き上げることにするか。誰が見ても笑えるマシーンが少なくとも一台は展示されてるようです。お見逃しなきよう。

 それにしても、雨が降ってもオーバルでレース出来るようにはならないものか。巨大な傘というか屋根を被せてしまえばいいのではないか。もてぎの一周距離は1.549マイル=2.493kmだから、円周率3.141593で割ると直径0.794km、ざっと800mの傘だ。おっとコース形状は真ん丸じゃないわな。それに、コースは濡れなくても観客がビショ濡れというのもマズいから、そうだ、ドーム型屋内サーキットはどうだ。ありえねぇ!と言うなかれ、アメリカじゃ冬の間、体育館の中でインドア・ミジェット・レース大会が開催されてたりするのだ。まぁ屋内でやった場合、排気音と排気ガスをどうするか、という問題はあるが、電気レーシングカーの開発ぐらいホンダだったらお手のものという気がするのだが。

 スポーツイベントの成否が天候に左右されやすいのは、日本では当然のことで、何も今週末のもてぎに限った話ではない。新装・富士スピードウェイで今秋開催されるF1日本グランプリも、台風シーズンなだけに、いちレースファンとして気を揉むところだ。

 1950年に始まったF1GP世界選手権の長い歴史のなかで、雨や悪天候のせいで開催中止となった例はただの一度もない。世界中の人がTVで見ているF1GPだから(TV放映権の重大さを考えよ)、大雨ぐらいでやめるわけにはいかないのだ。言い換えれば、どんな形になろうとも、レースは行なわれるということでもある。好例(?)としては、去年のフォーミュラ・ニッポン開幕戦のように、大雨のなか、ペースカーに先導されて2周でお仕舞いにして一応レース成立ね、得点は半分だけどゴメンね、ということだって、ないとは言えない。「ふざけんじゃねぇ、金返せ」という直情的ファンもいるだろうが、そういう珍レースは一生に何度も見られるものではないと思えば、むしろラッキー!と喜ぶべきかもしれない。

 それとも、トヨタの技術力でもって、富士スピードウェイ周辺に雨雲が近寄らないようなコントロールシステムを開発するというのはいかが。

 何はともあれ、今週末、晴れてくれないかなぁ。

 ザアザアぶりだったら、「ハイそれまでョ」で「こりゃシャクだった」。

(2007年4月18日  読売新聞)