不況下 80年代の力感
NY
2009〜2010年秋冬ニューヨークコレクションが、13日から20日まで開かれた。不況の影響で沈滞ムードが漂う中、肩パッド入りのジャケットや体の線を強調した服など、1980年代の流行を取り入れたブランドが目を引いた。そうした力強い服に、デザイナーは「逆境をはね返そう」という思いを込めたようだ。(谷本陽子)
昨秋以降の深刻な不況が、コレクションにも暗い影を落とした。服飾メーカーの倒産やショーの中止といったニュースが流れ、経費削減でショーの規模を縮小し、演出も簡素にしたブランドが多かった。
デザイン上の冒険もしづらいのだろう。提案された服も、黒やグレーなど無彩色で奇をてらわないデザインが目立った。そんな中、女性の社会進出が進んだ80年代の流行を参照し、華やかで力強い服を発表したブランドが注目された。
例えば、マーク・ジェイコブス。髪を逆立たせ、派手な化粧のモデルに、80年代風の肩パッドの入ったジャケットや、角張ったケープなどを着せた。しかも、色遣いはピンクや黄色など鮮やかな色が主流。「何もかもが素晴らしく、楽しかった80年代のニューヨークのエネルギーを服で表現した」とデザイナーは話す。
アレキサンダー・ワンも、80年代に触発された一人。マイケル・ジャクソンの曲「スリラー」が流れる会場で、当時流行したアズディン・アライアの服を思わせるボディーコンシャスなスーツを見せた。ベテランの
ナルシソ・ロドリゲスも、体にぴったりと沿ったドレスやカムフラージュ柄のコートを提案した。
いずれのデザイナーも、消費者の落ち込んだ気持ちを、にぎやかな80年代風の服で鼓舞しようと試みたかのよう。
服を仕入れる予算が削られ、買い付けも慎重にならざるを得ない――。コレクション期間中、百貨店の買い付け担当者が、そう話すのを何度か聞いた。その声を先取りしたかのように、ダイアン・フォン・ファステンバーグやタクーンは、売り上げに結びつけやすいバッグやアクセサリーを、ショーの中で積極的にアピールした。
新進ブランドが大手ディスカウント店と組んだ商品を発売したり、手ごろな価格のセカンドラインを始めたり、不況を乗り切るため、ファッション界の模索が始まっている。
「ヨミウリ・オンライン」(http://www.yomiuri.co.jp/collection/)では、コレクションの模様を詳報しています。
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