Q.障害者用駐車場の利用証
車に掲示求め一般客減少
公的施設や大型商業施設などに設けられた障害者用の駐車スペース。理解不足から一般客が車を止めてしまい、必要な人が使えないことも多いのが実態だ。このため、一定の条件を満たす人に「駐車場利用証」を交付し、車外から見えるよう掲示することを求める自治体が増えている。
茨城県つくば市の大型商業施設「イーアスつくば」の駐車場。車いすマークが入った看板のある一角に、同市在住の軽部弘さん(47)がワゴン車を止めた。昨年10月に同県から交付された「身障者等用駐車場利用証」を取り出し、外から見えるようルームミラーにぶら下げる。
同県で利用証の交付を始めたのは昨年10月。それ以前の週末などは、この駐車場にある障害者専用の42台分は満車になることが多かった。下半身が不自由で車いすを使っている軽部さんは、通常の駐車場では狭くて乗降ができない。このため駐車をあきらめ、別の店に移動したこともあったという。「この制度が始まってから、障害者用のスペースを使う車が減ったような気がします」と話す。
2006年に施行されたバリアフリー新法では、障害者も安心して外出できる社会を目指し、一定規模以上の施設を新設する際は、幅の広い障害者用の駐車スペースを設置することが義務づけられた。店舗に近い場所への設置が多いこともあり、障害のない一般客が駐車しているという苦情が各地の自治体などに寄せられていた。
同県などで導入されているのは、障害者用駐車場利用の条件を自治体が条例で定め、認定された人に利用証を交付する制度。「パーキングパーミット制度」と呼ばれることが多い。車外から見えるように掲示を求め、一般客による駐車を減らすことが期待されている。
こうした制度は06年7月に佐賀県が全国に先駆けて導入し、各地に広がった。今年1月には「パーキングパーミットを進める全国会議」も開かれ、とりまとめ役となった同県の担当者によると、京都府や岩手、群馬、新潟、岡山、長崎県などの25府県と埼玉県川口市など3市が制度を導入している。この会議では、各府県の利用証は、4月から同様の制度のある別の府県でも利用できることで合意した。
ただ、国土交通省が昨年度、制度が導入されている2県1市の障害者ら約1280人を対象に行った調査では、専用駐車場に止められなかった理由として、「利用証の掲示のない車の駐車が多い」が6割を超えており、周知不足が課題。また、東京都や大阪府などの大都市では導入が進んでいない。
日本身体障害者社会人協会会長の山崎泰広さんは、「許可証の交付制度を進めるとともに、障害者用駐車場について一般の人の理解を深めていくことが必要だ」と指摘する。
障害者用駐車場利用証制度の主な内容 |
---|
・バリアフリー新法に基づき、利用証に関する条例を制定している自治体で実施。希望者は自治体に申請し、各自治体で定めた条件に照らして交付が決まる ・歩行困難な身体障害者、知的障害者、難病患者や、要介護度1以上と認定された高齢者らを対象とする自治体が多い ・妊娠7か月から産後3か月の妊産婦、一時的な病気やケガで歩行困難になった人なども含まれることが多い。その場合、有効期限が設定され、利用証の色で違いを表す自治体もある ・利用証はルームミラーにつり下げるなど、車外から一目でわかるように掲示する |
ピックアップ
トップ
|