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Vol.256クライスラー グランドボイジャー

走行中の静寂性にこだわったミニバン
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初代を思い起こさせる外観の5代目グランドボイジャー

 クライスラーのミニバンであるグランドボイジャーが、7年ぶりにフルモデルチェンジをした。

 いま、日本ではミニバンしか売れないとまで言われるほどの新車市場動向だが、そもそもミニバンを生み出したのは、クライスラーであった。アメリカには、バンと呼ばれる3〜4列シートで10人前後が乗れるクルマがあり、ホテルの送迎など業務用にも使われてきた。それを家庭用に3列シートとし、6〜7人乗りに小型化したのがミニバンだ。そして、家庭で子供の送迎などに使われるようになった。

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走行中も静かな室内

 新型グランドボイジャーはすでに5代目で、クライスラーがミニバンを生み出した当初のような、やや角張ったスタイルに原点回帰している。顔つきは、近年クライスラーで人気を得たセダン/ステーションワゴンの300Cに似たデザインだ。それというのも、300Cのデザイナーが新型グランドボイジャーも担当したのだそうだ。

 車体は前型よりさらに大きくなり、前後タイヤ間のホイールベースが5センチのばされて、室内の広さや、走行時の直進安定性を高めた。車体の全長は前型でも5メートルを超えている。新型は車体幅がついに2メートルを超える巨体だ。しかしながら、デザインの効果だと思うが、それほど大きなクルマには見えない。

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室内が広くなり、後列の快適性も向上

 新型グランドボイジャーは、走行中の静粛性にこだわった。車体剛性を改善するとともに、車体に充填剤を注入したり、サイドドアガラスを厚くしたりするなど、あらゆる面から静けさを追求している。タイヤも初めて日本製を標準装着し、タイヤからの騒音低減に一役買っているようだ。

 実際、走行中の新型グランドボイジャーの室内はかなり静かだ。1列目と3列目の席とで会話が成り立つほどであった。また、ホイールベースが長くなったことにより、2列目や3列目に座ったときの快適性も改善されている。

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3列目のシートアレンジは電動で

 新型グランドボイジャーの装備の特徴の一つに、3列目シートのアレンジを電動で行える機能がある。床下収納したり、シートを反転させ、ベンチシートのようにして郊外で一休みする際に座れる場所を提供したりという状態へ、電動でアレンジを変えられる。そのスイッチは、リアハッチゲートを開けると、荷室左側の壁面に設けられている。多少時間は掛かるが、大きな座席を自分で持ち上げたり、動かしたりせずにすむ。

 エンジンは、3,800ccのV6で、6速オートマチックトランスミッションが組み合わされる。車両重量が2トンを超えるクルマだが、加速性能は十分満たしている。走行中の安定性も申し分ない。

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シートアレンジの電動スイッチ

 ただ、運転感覚や乗車感覚が、日本製のミニバンに似ている気がして、アメリカの輸入車を選んだ嬉しさが伝わりにくいのが残念だ。そうしたなかでもアメリカ車だなと実感させたのは、アメリカ国内のフリーウェイの制限速度に近い80km/hほどで走らせていると、なんともゆったりした気分にさせられることだ。フリーウェイで最適な走行性能と乗り心地のよさが作り込まれているのだろう。

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3,800t V6エンジン

 車体幅が2メートルを超える新型グランドボイジャーが、日本の道路で誰にでも使い勝手のいいクルマとはいえない。駐車場で苦労することがあるかもしれない。だが、日本では、アメリカと違って生活のためのクルマとしてではなく、フリーウェイを流して走るような雄大なアメリカの旅を夢想しつつドライブに出掛けるといった、家族でノンビリ旅を楽しむとき、日本やヨーロッパ製のミニバンでは味わいにくい、のびやかな雰囲気で、ゆったりとくつろげるミニバンとしてはいい一台だと思う。