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料理
甘味主義

「五三焼カステラ」 卵の風味 幻のカステラ

 長崎の「松翁軒」は創業天和元年(1681年)のカステラ専門店である。九州以外には店舗を出さない。流れ作業はせず、粉を量るところから焼き上げるまで、一人の職人が責任を持って担当するなど、独自のスタイルを守っている。

 この店に五三焼(ごさんやき)というカステラがある。11代目当主の山口喜三(きぞう)さんが、2007年に完成させたもので、コクがあり卵の風味が豊かだ。しっとりとして、口の中でしゅんと溶けるように軽く、軟らかい。

 江戸時代、長崎には「五味(ごみ)かすてら」と呼ばれる上質のカステラがあった。語呂が悪いと、明治には「五三焼カステラ」と改名した幻のカステラである。

 以前から、この五三焼を復活してほしいというお客さんの声があった。しかし、当時と比べたら窯も技術も格段に進歩している。材料の質も良い。現在のカステラは、明治の五三焼よりはるかにおいしいはずである。なぜ今、五三焼なのか。やがて山口さんが気付いた。お客さんは特別な方に贈る上等の品、もっと口溶けよく、コクがあるという意味で五三焼と言っているのだ。

 最近では、ほかの長崎の店でも、五三焼カステラを作る店が増えてきた。松翁軒では卵黄を多くして、その分卵白を減らしている。砂糖も増やしたが、後味は軽やか。この店らしいが、既存のものと、明らかな違いが感じられるものを目指した。

 試作を重ねるうち、先祖たちがカステラに込めた思いが伝わってきた。こうして出来上がった五三焼には、山口さんの思いが詰まっている。(フードライター・中島久枝)

1本2520円

松翁軒(しょうおうけん)
〒850・0874 長崎市魚の町3の19
電話 095・822・0410
2012年2月27日  読売新聞)

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