「産婦人科デビューをスマートに」<1>
数年前から若い人を中心に「微妙」という受け答えが増えています。ところが、この「微妙」、気持ちは分かるのですが、私たち医療現場ではとっても困る反応なのです。
Aさんは10代後半のフリーター、初めての産婦人科受診です。
Dr:こんにちは、やすひです。今日はどんなことでいらしたんですか?
Aさん:なんとなく変で…
Dr:どこが?
Aさん:子宮?かな?
Dr:子宮っておなかのこと?
Aさん:あーいやもっと下?
Dr:外陰部?性器の皮膚のこと?
Aさん:(顔を上げて)そう!
皆さん緊張されてこられます。私たちスタッフもよく心得ているつもりです。でも…性器、クリトリス、子宮などなんとなく一緒に考えられがちですが、もっとご自分のからだを、率直に的確に症状を伝えていただきたいのです。でもこれは若い人たちだけではなくお産を何回かされた方でもそう。それは、実は、女性の性器に関わる名前は学校でも社会でも暗黙のうちに「ないもの」とされているからなのです。女性自身のからだというより、男性や社会の目による「セックスの受け皿」としての「女性の性器・からだ」だからと思われます。
Aさんとの会話が続きます。
Dr:どんな感じ? 痒いとか痛いとか? おりものがあるとか?
Aさん:微妙…
Dr:(出た!)
Aさん:痛いまではないけど…
Dr:痒いってことかな? いつから?
Aさん:いつのまにか…
どんな「症状」が「いつから」あるのか、というのは私たち医療者にはとても大切な情報です。できたら、具体的な数字も含めて表現していただきたいのです。わざとこのAさんには典型的によくない症例になっていただき、私たち医療者のホンネもまじえてみました。
ではどのようにスマートに産婦人科デビューできるか、次回に続きます。
プロフィール
安日泰子(やすひ やすこ) 産婦人科医
やすひウイメンズヘルスクリニック院長、長崎大学医学部非常勤講師
1953年生まれ、東京女子医大卒業。医学生のときに内診というものを見て衝撃を受ける。女性のからだを診るのは女性、と単純に思い産婦人科医に。
性教育に携わる中で、「かかりやすい産婦人科を」の声を長年聞き、では自分で追求しようと一念発起、2003年に長崎市内に開業。「ふつうの人が、最も輝く」それを垣間見ることができるのが臨床の楽しさだと思っています。
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