女性ホルモン補充療法
HRT(HRT hormone replacement therapy)という治療法を聞いたことがありますか?卵巣機能の低下によって体内に不足した女性ホルモンを外から補うことにより、ホルモンの不足が原因でおこる諸症状を改善する治療法です。
ホルモンが不足して起こる症状としてよく知られているのは更年期障害ですが、概ね45歳ぐらいから55歳ぐらいの女性に起こり、代表的な症状として、のぼせ、発汗、動悸、不眠、イライラなどがあげられます。
女性ホルモンは、排卵や月経を起こし、女性らしいからだつきをつくるだけでなく、肌に張りをあたえたり、骨の健康を保ったり、コレステロールの増加を抑えるなど色々な働きをしているため、不足してくるといろいろな症状が起きて、心身の変化に驚く方も少なくありません。たとえば、皮膚の弾力が無くなりカサカサして、しわができ、毛髪が細く薄くなります。
膣粘膜は萎縮乾燥し、性交痛が起きます。尿失禁や性器脱もおこりやすくなります。肥満、高脂血症、骨粗鬆症になり、脳血管障害や骨折により寝たきりになるリスクが上昇します。興味や集中力が低下し、記憶力が衰え、認知症が増えます。これらは今まで「老化」とされ仕方がないものとあきらめていましたが、実は「女性ホルモンが不足して起きる症状であり、HRTにより予防できる!」ことがわかってきました。
これからは「老化」に対しても予防や治療出来るものは積極的に行い、生活の質を向上させ、元気に年をとり健康寿命を延ばす努力が必要な時代になりました。HRTは、閉経後の女性の生活を改善する有効な手段の一つです。閉経後なるべく早く始め、5年間行うのが効果的といわれています。さらに、骨粗鬆症や認知症の予防には長期的に行うことが好ましいと考えられています。
ただ、5年以上のHRTは、乳癌の発症を30%上昇させるというデータがあります。しかし実際の数値としては年間千人に一人増える程度で、タバコの害に比べれば微々たる上昇です。とはいえ最近乳癌は増えています。月経不順、肥満、未産、高齢出産、高脂肪食、アルコール摂取、食物繊維の少ない食事などは、いずれも乳癌発生率を上昇させます。HRTをする場合はそのような危険性も認識し、生活習慣を整えた上できちんと検診をし、安心して受けることが大切ですね。
いきいき豊かに輝いて年を重ねたい方はぜひ専門医でHRTについて相談してみてください。
プロフィール
金重惠美子(かねしげ えみこ) 特定医療法人鴻仁会岡山中央病院 副院長 ウィミンズメディカルセンター長
岡山大学医学部医学科卒業 産婦人科専攻 医学博士 一般産婦人科外来、更年期閉経外来、不妊内分泌外来を担当。平成11年、女性の一生を通じての健康を支援するための「ウィミンズメディカルセンター」を開設。特に対策が遅れている思春期および更年期以後の中高年女性のこころとからだの健康支援と生活の質(QOL=quality of life)の向上を目指している。
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