女性の健康Q&A 「性感染症」<3>
第1テーマ「性感染症」
回答してくださった先生:対馬ルリ子先生
質問<3>
パートナーが毛じらみをうつされてきました。うつらないためにはどうしたらよいのでしょうか。同じ布団で寝たり、同じタオルを使うことは避けたほうがよいのですか?
回答<3>
ケジラミは、吸血性の昆虫です。アタマジラミ、コロモジラミなどと同じく、ヒトにのみ寄生する昆虫ですが、性感染するのはケジラミだけです。
ケジラミは主に陰毛に寄生して、毛の根元に卵をうみつけ、繁殖します。症状は、激しいかゆみです。感染してから1〜2ヶ月で症状が出てきますが、皮膚には変化が現れません。吸血した血が下着に斑点状につくのでわかることもあります。陰毛をよく見ると毛の根元に1ミリぐらいのカニに似た虫がへばりついているのが確認されます。爪などではがして見ると、6本の足を動かしているのがわかるでしょう。
ケジラミは、吸血した血液を栄養分として育ち、成虫になると、毛の根元にしっかり付着させて卵を産みます。3〜4週間の生存期間で、30〜40個の卵を産むそうです。卵も、肉眼あるいはムシメガネで確認できます。アタマジラミとは、形が違うので鑑別されます。アタマジラミは楕円形なのに対して、ケジラミは白っぽい円盤状をしています。治療は、薬局で売っているフェノトリン(商品名スミスリンパウダーあるいはスミスリンシャンプー)を買って使いますが、これは卵には効果がないので、3〜4日ごとに3〜4回、根気よく治療をくりかえさないとケジラミを完全には駆逐できません。
同時に、陰毛などの毛をすっかり剃ってしまうのが、早く直すためには有効です。ケジラミは、毛のないところでは生きていけないからです。海外では、病院で処方するよい薬がいろいろ出ていますが、日本では今のところ市販のフェノトリンのみです。ケジラミは、毛布やタオルなどでもうつることはありますが、ヒトから離れて長くは生きていけないので(48時間)、セックスパートナーや母子の間で毛がふれあってうつることのほうが圧倒的に多いでしょう。ですから、パートナーや家族の治療も同時にすることが大切です。タオルや寝具は、アイロンなどで熱処理するか、ドライクリーニングしてください。ケジラミは、他のシラミ類とともに、戦後激減していましたが、70年代から海外との交流がふえるにつれてまた増加傾向ですので、気をつけましょう。
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プロフィール
対馬ルリ子(つしま るりこ) 産婦人科医・医学博士
ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック院長。NPO法人女性医療ネットワーク理事長。
(社)日本女医会理事。周産期学、ウィミンズヘルスが専門。弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、現在のクリニックを開院。女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、保健・医療を推進する「女性医療ネットワーク」では、様々な立場のメンバーと連携して活動している。
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