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女性の健康Q&A 「更年期障害」<2>

第2テーマ「更年期障害」

回答してくださった先生:対馬ルリ子先生

質問<2>

 6年程前から、更年期と診断され、ホルモン投与を受けていますが、アメリカで婦人ホルモンの長期投与は脳の萎縮を招くという調査結果が発表されました。投与をやめるべきでしょうか?(60代 愛知県 専業主婦)

回答<2>

 質問者の方は、ホルモン投与について不安をお持ちのようですので、ここでホルモン補充治療についてご説明しましょう。女性ホルモン補充治療は、減ってしまった女性ホルモンを補う治療です。更年期症状は、卵巣の働きが悪くなったために脳の視床下部があせって指示を過剰に出してしまい、そのために自律神経が暴走したり、感情が不安定になる一種の適応障害といえます。少しだけホルモンを補うと症状が軽くなるのです。このように脳と体のバランスが落ちつくまで女性ホルモンを補うことはまったく不自然なことではありません。

 欧米では、女性が長生きになって社会で働くようになった20世紀後半、女性ホルモン補充療法がとてもさかんになりました。知識層では80%が補充しているといわれる国もあるぐらいです。働く女性が更年期症状で悩まされていては、仕事が進まないし、カップル文化でもありますから、女性が急に老けこむと、パートナーである男性も困ってしまうということもあったでしょう。

 ところが、アメリカでは、「ホルモン補充をするといつまでも若くいられる」ということで、誰もがホルモンをどんどん使うようになりました。そして、米国国立衛生研究所(NIH)が行ったウィミンズ・ヘルス・イニシアティブ(WHI)という研究から、2002年に警告が出されたのです。それが、「女性ホルモンを使用していると心筋梗塞、脳卒中、脳塞栓、乳がんが増える」というものでしたので、日本では大騒ぎ。しかし、これは、実は平均年齢63歳、喫煙率と肥満率がかなり高い人たちのデータだったということまでは報道されなかったのです。

 少なくとも50歳代までの女性たちにとって、ホルモン補充療法のメリットはデメリットを大きく上回るものであり、特に乳がんや心臓・血管・脳疾患が増えるということはありません。逆に大きく減らせる病気がたくさんあります。世界でもそれが確認されていますし、日本でも更年期医学会と産婦人科学会が「ホルモン補充療法ガイドライン」を作成しており、「ホルモンは恐いものではない。更年期のつらい症状を和らげるばかりでなく、生活を快適にし、アルツハイマーや骨粗しょう症など60歳代以降の病気の予防にもなる」とはっきり打ち出しています。

 女性ホルモンを使って、低下していた脳血流が40%も上昇したという実験もあるんですよ。確かに、患者さんの多くは、「ホルモン補充治療をはじめたら、気分が明るくさっぱりして、意欲や集中力が戻った気がする」とおっしゃいます。

 わたし自身も50歳。ホルモン補充をいろいろ試してみています。ホルモン補充は、飲み薬ばかりでなく、ジェル、パッチ(貼り薬)もありますし、エストロゲンと黄体ホルモンの2種類の女性ホルモンを組み合わせたコンビ内服薬、コンビパッチも発売されました。2種類を補うメリットは、ホルモンバランスをよくする事によって子宮体がんの予防をすること、デメリットは、これまでは組み合わせて飲むのが面倒という点だったのですが、これからはコンビができて、便利になりますね。

 せっかく50年近くデータが蓄積され、何十億人の女性たちがこれまでじょうずに使ってきた女性ホルモン薬。健康保険も使えますし、年齢と体調に合わせて、量や投与方法を工夫すれば、何歳になっても試せます。検診さえきちんと受けていれば、自信をもっていつでも使えるはず。更年期治療にくわしい婦人科医に相談して、ぜひお試しください。

プロフィール


対馬ルリ子(つしま るりこ) 産婦人科医・医学博士

ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック院長。NPO法人女性医療ネットワーク理事長。
(社)日本女医会理事。周産期学、ウィミンズヘルスが専門。弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、現在のクリニックを開院。女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、保健・医療を推進する「女性医療ネットワーク」では、様々な立場のメンバーと連携して活動している。

◆女性医療ネットワーク http://www.cnet.gr.jp/

女性の体と心の健康と幸福に貢献する統合医療をめざすNPOです。メンバーが交代でコラムを執筆します。

2009年2月26日  読売新聞)

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