女性の健康Q&A 「更年期障害」<3>
第2テーマ「更年期障害」
回答してくださった先生:対馬ルリ子先生
質問<3>
動悸やめまいなどの更年期の症状に悩んでいます。ホルモン療法治療が効くということですが、個人的にはどうしても抵抗を感じてしまい、治療に踏み切る気持ちになりません。漢方が効くという話も耳にするのですが、更年期の症状に効く漢方薬についての基本的な情報とか、その他にも、もしホルモン療法以外によい方法があれば教えていただけませんか?
回答<3>
前回は、更年期症状の緩和に女性ホルモン補充治療が効くことをお話ししました。けれど、女性ホルモンは安全と聞いても抵抗がある人、乳がん治療中など女性ホルモンを使えない状態の人、自分でできる生活の工夫で乗り切りたい人などもいることでしょう。今回は、ホルモン補充治療以外の更年期治療についてお話しましょう。
まず、漢方薬についてです。漢方とはいっても、現在の日本の漢方治療は、日本人の体質にあわせて日本独自で発達した治療法です。病院で処方してもらえば、健康保険も使えます。漢方の考え方は、一言でいえば、"生体内バランスの改善"です。誰もがもっている体質の偏り、弱点などから「証」を診断し、それを全体に良い方向にもっていく改善薬として漢方は使われます。ですから、お友達が飲んでよかった漢方薬が自分にも効くとは限りませんし、逆にのぼせの改善のために使った漢方が、肩こりや便秘にも効いた、ということもよくあるのです。
更年期によく使われる三大漢方薬は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。当帰芍薬散は、やせていて体力がなく、冷えやすい人の、頭重、めまい、肩こり、倦怠感、動悸などに効き、加味逍遥散は精神的に不安定で便秘ぎみの人の、冷え、イライラ、不眠、頭痛、めまい、肩こりなどに効きます。桂枝茯苓丸は、体力があり、お腹がはっている人の頭痛、めまい、のぼせ、肩こりに効くので、同じ肩こりでも、タイプによって飲むくすりが違うことがわかりますね。また、これらは月経不順など若い世代にも使うので、「更年期障害」ばかりが目的ではないこともわかるでしょう。つまり、自分にとって相性のよい漢方をマイ漢方としてみつけてあると、疲れた時、月経周期が乱れた時、なんだか体調が悪い時などに、いつも頼れるという心強いことになるのです。漢方医や婦人科医に相談して、普段から自分にあった漢方を捜しておきましょう。
次に、抗うつ剤や抗不安薬などのいわゆるメンタル系のくすりです。女性ホルモンが低下すると、セロトニン、メラトニンなどの脳内調整物質の代謝が影響を受け、うつやイライラ、不眠などがおこりやすいことがわかっています。抗うつ剤や抗不安薬などは、これらの代謝をよくし、気分を安定させ、ぐっすり眠れるようにしてくれます。パキシル、ルボックスや、デパス、リーゼ、メイラックスなどは婦人科でもよく使われる軽いくすりです。くせになるとか、依存症になるとか、ボケるということはありません。早く症状が落ち着いて、安心して暮らせるようになるほうがずっと大事です。医師に相談しながら上手に使ってください。
自分でできる症状緩和法で、最もおすすめなのは、運動。だるくて体が動かないのでなければ、ウオーキングや、スイミング、ヨガ、ピラティス、筋トレなど、定期的に体を動かし、代謝を上げ、柔軟性や筋肉を増す運動は、気分をすっきりさせるばかりでなく、自律神経の働きを整えてくれます。つまり運動は、のぼせや発汗、イライラ、不眠、だるさや便秘、腰痛、肩こりも緩和してくれる、どなたにもおすすめの方法です。
また、食事も自分でできる緩和法の一つです。納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品は、イソフラボンというエストロゲン(女性ホルモン)によく似た成分を含むため、多めにとると、マイルドな女性ホルモン補充をやったのと同じような効果があることがわかっています。食品からなら多めにとってもとりすぎるということはありません。1日40ミリグラムが目安です。サプリメントでは、1日量を守ってください。
他に、代替療法として、アロマセラピー、気功や整体などの方法が効くことがあります。それぞれ好みや体質に応じて使い分けましょう。
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プロフィール
対馬ルリ子(つしま るりこ) 産婦人科医・医学博士
ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック院長。NPO法人女性医療ネットワーク理事長。
(社)日本女医会理事。周産期学、ウィミンズヘルスが専門。弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、現在のクリニックを開院。女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、保健・医療を推進する「女性医療ネットワーク」では、様々な立場のメンバーと連携して活動している。
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