女性の健康Q&A 「ピル」<2>
第5テーマ「ピル」
回答は、種部恭子先生
質問<2>
今45歳ですが、ピルを飲んでいます。ピルはいつまでも飲んでいられるのか、何か弊害はあるのか知っておきたいです。それと更年期に入っている時期だと思うので(自覚症状はまだありませんが)、今後、飲み止めの時期はどう考えておけばいいでしょう? 友人はホルモン補充療法(HRT)を受けているのですが、今後どちらをどう使っていけるのか教えてください。(40代)
回答<2>
日本の女性の閉経平均年齢は約51歳ですが、個人差が大きく、閉経年齢は40代半ばから50代半ばまで約10年の差があります。閉経の数年前から月経周期の短縮、月経出血が長引くなどの症状が出現するようになり、閉経周辺期になるとホットフラッシュや発汗、不眠などの更年期症状を伴うようになります。したがって、40代であれば、典型的な更年期症状よりも、月経不順や不正出血などの症状に悩まされることが多いようです。
ホットフラッシュなどの更年期症状に対してはホルモン補充療法で十分効果が得られますが、それより少し前に起こる月経不順や不正出血などに対しては、更年期のホルモン補充療法ではホルモン量が少ないためコントロールが難しく、ピルが抜群の効果を発揮します。もちろん、ピルを服用しているとホルモン量は十分安定したレベルで保たれるため、更年期症状は出現しません。
40歳以上の場合、加齢による心血管系疾患のリスクが高いため、ピル使用に際しては副作用のリスクに気をつけなければいけませんが、逆にいえば「気をつければ使用できる」ものです。45歳であれば閉経まではまだ少し時間がありそうですが、月経周期のコントロールと更年期症状の予防を目的として、女性ホルモンの補充を兼ねたピル服用がお勧めです。
ただし、加齢とピル服用の両方の要素によって、心血管系障害を起こすリスクは高くなりますので、いずれは量の少ないホルモン補充療法に切り替えていく必要はあると思います。
ホルモン補充療法へ切り替える時期に決まりはありませんが、ピル服用のリスクになるような基礎疾患(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満など)がない方であれば、閉経平均の51歳前後までピルを続けられても問題はありません。
そろそろ閉経かな、と思ったらホルモン補充療法に切り替えるわけですが、ピルを服用している限り何歳になろうと月経は起こりますので、いつが閉経なのかわからず切り替えるタイミングが難しいですね。とはいえ、閉経かどうかを確認するためにいきなりピルをやめると、抑えられていた更年期症状が出現するかもしれません。
いきなりやめるのではなく、ホルモン補充療法に切り替えてみて、月経のコントロールなどがうまく行かないようであればピルに戻してみるなど、ケースに応じた対応が必要だと考えます。主治医と相談しながら、なだらかに、しなやかに、閉経までの数年を上手に過ごすことをお勧めいたします。
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プロフィール
種部恭子(たねべきょうこ) 産婦人科医・医学博士
女性クリニックWe!TOYAMA院長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。
富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業後、富山医科薬科大学付属病院、愛育病院、済生会富山病院などを経て2006年より現職。専門は生殖内分泌・不妊、思春期婦人科学。女性の心とからだの健康支援と女性を取り巻く社会環境問題にも積極的に関わる活動をしている。クリニックの名前「We!」はWomen’s Empowermentに由来。
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