女性の健康Q&A 「子宮がん」<2>
第9テーマ「子宮がん」
回答は、上坊敏子(じょうぼう・としこ)先生
質問<2>
昨年12月に子宮頚がんの円錐切除をうけました。摘出部分の精密検査の結果、0期で取りきれたことがわかりました。医者からは子宮頚がんになりやすい体質なので、細胞診を続けるように言われ、3か月ごとに受けていますが、再発する可能性はどの程度あるでしょうか?また、以前不妊治療でホルモン剤を服用していましたが、ホルモン剤と子宮がんとの関係は何かありますか?子供はどうしても欲しいので、体外受精にも挑戦したいのですが、可能でしょうか?
回答<2>
子宮頸がんの治療法は、癌の進行程度によって大きく異なります。質問者のように0期(上皮内がんともいいます。粘膜の中にがんがとどまっている最も早期の状態です)であれば、75%程度の患者さんが円錐切除による治療を受けています。浸潤が3ミリメートル以下であれば、0期と同様に円錐切除で治療することが可能ですが、3ミリメートル以上の浸潤があれば、子宮摘出が基本的な治療になります。子宮摘出の術式は、がんの進行度で異なり、1b期や3期では広汎性子宮全摘出術という大がかりな手術が必要になります。3期以上の進行がんでは、放射線治療が中心になり、近年では化学療法との併用がしばしば行われています。2期までの頸がんでも、年齢や合併症などから大がかりな手術のリスクが高いと判断される場合は、放射線療法が選択されます。
0期の頸がんを円錐切除で治療した場合、90〜95%の患者さんは1回の治療で完治することが報告されています。5〜10%の患者さんは、病変が十分切除できず遺残したり、再発することがあります。再発といっても、一般のがんの再発(これは多くの場合死を意味します)とは違い、子宮頸部にまた病変ができるだけです。再発病変が大きくなる前に発見すれば、再度の円錐切除による治療が可能な場合もありますし、少なくとも子宮を摘出することによって完治させることができ、命に関わるようなことはありません。このような小さな再発病巣を肉眼で診断することはできませんから、手術後も細胞診を用いた経過観察が重要なのです。細胞診は一般にクラス分類で判定されます。1、2は陰性です。3は異形成を、4は上皮内がんを、5は浸潤がんを疑う細胞の出現、とおおまかに考えてください。3以上では精密検査が必要です。
ご質問の方はホルモン剤と子宮頸がんの関係を心配していますが、子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスです。不妊治療で使用したホルモン剤が関係することはありません。もちろん体外受精に挑戦されることに何ら問題はありません。
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プロフィール
上坊敏子(じょうぼう・としこ) 社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長
1948年生まれ。1973年、名古屋大学医学部卒業。北里大学病院での5年間の研修後、北里大学医学部研究員、講師、助教授を経て、平成19年に教授に。同4月から社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長、北里大学医学部客員教授。専門は婦人科腫瘍学。細胞診専門医、国際細胞学会会員、婦人科腫瘍専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、などの資格を取得。
著書に「女医さんシリーズ 子宮がん」(主婦の友社)、「痛みのレディースクリニック」(講談社)、「知っておきたい子宮の病気」(新星出版社)、など。
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