二世帯住宅、再び注目
間取り工夫 適度な距離感
共働きの子育て世帯を中心に、二世帯住宅が見直されている。育児や家事を手助けしてもらえ、親側にも同居の安心感がある。
住居費を節約できる経済面のメリットも大きい。間取りなどを工夫すれば、世帯ごとの独立性と、家族としての一体感のバランスがとりやすいという。
東京都豊島区の会社員、南部清さん(65)と妻の恵子さん(65)は、長男で公務員の洋平さん(38)一家と同居している。孫の誕生がきっかけで、木造2階建て住宅を3階建ての二世帯住宅に改築した。
1階と壁で仕切った2階の半分は清さん、2階の残り半分と3階は洋平さんの世帯が使う。1階の入り口には玄関が2か所設けられ、洋平さん一家は専用の廊下と内階段を通って、直接自分たちの部屋に行ける。清さんらが使う廊下や階段も別にあり、二つの廊下はドア1枚でつながっている。「お互いに適度な距離感を保ち、干渉しすぎずに助け合える関係を作りたかった」と洋平さんは話す。
小学3年生の長女(9)は帰宅後、清さんらの部屋で過ごす。両親の帰りが遅い日は、保育園児の長男(6)と一緒に、祖父母と食事をすることもある。
二世帯住宅というと、完全に分離され、外階段で行き来するような構造が多かった。最近は、プライベートな空間は保った上で、住宅内で行き来ができるよう工夫された住宅が増えている。
大手住宅メーカーの旭化成ホームズ(東京)は、2010年5月、祖父母と孫の交流を意識した新たな注文住宅を発売した。祖父母が子世帯のリビングを通らずに直接孫の部屋に行けるような構造も提案。孫の持ち物が両世帯に散逸しないよう、玄関先にはロッカーも設置できる。同社で二世帯住宅の研究に携わる松本吉彦さんは「家族全体がコミュニケーションを深める場所と、それぞれの世帯がリラックスできる場所。それぞれを考えた設計が大切です」と話す。
住友林業(同)が昨年10月に発売した注文住宅も、家族全員が集まりやすい広いリビングや、両世帯が廊下を通って気軽に行き来できる構造が特徴だ。その一方で、天井や床材の遮音性を高めプライバシーを守る配慮もしたという。「子育て世代の生活リズムに配慮しました」と、同社営業推進部の落合道則さん。夫の両親との同居は上下階に世帯を分け、妻の両親との同居は共用キッチンにするなど、個別の事情に合わせた間取りを提案することもあるという。
リクルートの住宅情報サイト「スーモ」が運営する展示場では、東日本大震災後、二世帯住宅を希望する来場者が増えているという。同サイト編集長の池本洋一さんは、「家族のつながりを重視する人が増え、親世代も子世代も安心できる二世帯同居が人気を集めている。特に、共働きの増加で、子どもを祖父母にみてもらいやすい工夫が求められているのでは」と指摘している。
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