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鮮度の陰に地道な努力

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林家たい平/画

 日本養魚飼料協会技術委員の林善敬(よしたか)さんに、養殖魚の代表格、ブリの最新飼料事情を聞いた。

 「まず木酢酸を与えると肉が締まる。次にゼオライト(鉱物の一種)をえさに混ぜると消化機能がアップして余分な脂質が落ちる。オキアミも身に甘味が増すと人気ですね」

 ただ、味や身質の印象は人それぞれだ。締まった肉を『やせ過ぎ』、甘い身を『くどい』と思う面々もいるだろう。「確かに。もし鮮度を効果的にアピールするなら色合いでしょう。どす黒い切り身と鮮紅色の切り身を並べ、前者を選ぶ消費者はいないですから」

 そこで林さんは目下、店頭である程度時間を経ても切り身の色合いが変わらない飼料を開発中だ。「いえいえ、特殊な材料を使うわけではなく、通常のビタミン剤の組成を変えることで何とかなりそうです」

 既にスーパーでの試験では、陳列から9時間を経ても血合い部分は当初の色合いを保った。「普通は6時間で明らかに変色し、ドリップ(液汁)も出てくる」

 ついでにポリフェノールが豊富なバナナの粉末も鮮度を保つ武器として期待大らしい。「生け簀(す)から出したタイを6分間地上に放置して戻す実験だと、粉末を与えたタイはほとんどが存命、与えないタイは半数が死んでいます」。どうやら人にとっての豊かな食生活が、そのまま養殖にも当てはまるようだ。

 「養殖魚が薬臭いとか脂っぽいというのは単なる条件反射的イメージでしかない。覆すのは大変だけど、地道なPRは続けたい」。水産庁栽培養殖課の取香(とりか)諭司さんも改めて強調する。

 遅まきながら農水省は先日、養殖魚の安全性や味を訴える小さな展示会を催した。これが大きなきっかけになればと思う。

(宇佐美伸)

2005年10月3日  読売新聞)
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