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書評


評・池谷裕二(脳研究者・東京大准教授) うつ病が高齢者に多いことをご存知だろうか。脳の研究に携わる者にとっては常識的なのだが、世間では意外なほど知られていないことに、しばしば驚かされる。 (4月23日)[全文へ]


評・尾崎真理子(本社編集委員) 明治から大正にかけて「煩悶(はんもん)青年」らが何かと世間を騒がせた。エリートなのに立身出世に背を向ける彼らは、二葉亭四迷や小栗風葉の小説から登場する。清純さと知性、スキャンダルを内包する「女学生神話」も併せて広まった。 (4月23日)[全文へ]


評・朝吹真理子(作家) 謡曲にとっての詞章は音楽のためにあるように、物語の筋の意味内容は「いつだってどこだって同じ」(『ページをめくる指』)で、読むという幸福な行為のためにそれは存在する。海辺の町、まゆみを四方にめぐらした家々の建つ砂岩段丘に住む少年の「私」は、洋裁士の母と伯母、祖母の四人で暮らしていた。「ちょっと出かけて来る」と言ったきり蒸発した父。 (4月23日)[全文へ]


評・細谷雄一(国際政治学者・慶応大教授) 高度成長に東京オリンピック。戦後日本が勢いよく成長する1960年代前半。首相を務めたのは池田勇人であった。「国民所得倍増計画」を進めた池田首相の実像は、必ずしもよく知られているわけではない。本書は経済史家が、池田勇人の経済思想と経済政策を中心に描いた評伝である。 (4月23日)[全文へ]


評・管 啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) オート=プロヴァンスと呼ばれる南フランス内陸部は乾燥した風が吹きすさぶ高原で、その荒涼とした風土に人々は()し潰されるようにして生きてきた。その故郷の町マノスクをほとんど出ることなく生涯を送った小説家ジャン・ジオノは、アメリカでいえばフォークナーにも匹敵する大作家だが、日本ではまだまだ読まれていない。最初の長篇(ちょうへん)である本作は1929年出版。それが文庫オリジナルとして訳出され、誰にでも手が届くものとなった。 (4月23日)[全文へ]


評・湯本香樹実(作家) 人や物と向き合うとき、私たちはその対象との距離を無意識に伸ばしたり縮めたりしている。ぐっと退いて客観的に検証し、あるいは間近に迫って感情移入を試みる、といった具合に。相手との、あるいは自分自身との距離を伸縮する様は、人の心が行う無限の反復運動であり、それがある程度自動的に行われるのがようするに「正気を保っている」ということなのだろう。 (4月23日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家)愉快な「何でも屋」 (4月23日)[全文へ]


評・三浦佑之(古代文学研究者・立正大教授) 私の生まれ育った三重県の山村には「大峯(おおみね)講」という組織があり、少年たちは一人前の男になるための通過儀礼として大峯修行をしなければならなかった。洞川(どろがわ)(奈良県天川村)から先達(せんだつ)に引率され、表と裏の行場を経て山上ヶ岳の大峯山寺に向かう。表の行場には鐘掛け岩や西の(のぞ)きがあり、裏の行場には(あり)の戸渡りや平等岩があって、一日中岩にへばりついていた。 (4月23日)[全文へ]


評・星野博美(ノンフィクション作家・写真家) 世界中の屠畜(とちく)場をめぐり、文化による屠畜事情の違いを(つづ)ったイラストルポ『世界屠畜紀行』で読者を驚かせた著者。私たちが食べる肉は、どのように育てられ、出荷され、食卓に上るのか。「自分で体験したい!」という欲望にひたすら忠実な彼女は次のステージ、つまり自分で三匹の豚を飼育して食べることに挑戦した。 (4月16日)[全文へ]


評・角田光代(作家) 恋人にふられ、勤め先が倒産し、(うつ)病と判断される二十四歳の青年。家族を捨てて逃げた過去を持つ、その会社の女性社長。短い旅に出た彼らと道中で知り合う、引きこもりの少女。それぞれに傷を背負う彼らは、半島の湾に迷いこんだクジラを見にいく。クジラ見学の客たちで近隣のホテルは満杯、三人は家族と誤解されたまま、ある民家に泊まることになる。 (4月16日)[全文へ]


評・尾崎真理子(本社編集委員) 多数の評伝が著されてきた詩人だが、面影は漠としたまま、時代から遠ざかりつつあった。しかしなぜ、川本三郎氏が北原白秋なのか。 (4月16日)[全文へ]


評・ロバートキャンベル(日本文学研究者・東京大教授) 日本の大学では今、学生にも教員にも「剽窃(ひょうせつ)」防止を声高に呼びかけている。他人の文章や実験成果などを無断で使う(つまり盗用する)(やから)が後を絶たないからだが、日本特有の問題ではない。アメリカでも教師は、学生から出されたレポートを「剽窃チェック」機能のソフトウェアにかけてから読み始めるのだ。 (4月16日)[全文へ]


評・中島隆信(経済学者・慶応大教授) 「アマチュア以上プロ未満」「かろうじて会社の広告塔としての存在意義にしがみつき、必死に野球を続けている」――本書は社会人野球の多くがおかれているそうした現状を題材とした痛快なフィクションである。 (4月16日)[全文へ]


評・杉山正明(ユーラシア史家・京都大教授) 大久保長安(ながやす)という、いささか奇怪で謎に満ちた人物を御存知ですか。時は戦国末期から徳川初期にかけてのころ。幾らかの愛称をこめて「ちょうあん」と呼んだりもする。おおむね、評判は芳しくない。だが、なににつけ才能・才覚に(あふ)れており、突出して有能だった。ある種のまがまがしさも含めて、強烈な個性と異能の持ち主であったといっていい。 (4月16日)[全文へ]


評・三浦佑之(古代文学研究者・立正大教授) 森鴎外(おうがい)の故郷・津和野が島根県だというのをご存じでしたか。私は数年前まで山口県だと思っていました。事程左様に忘れられ、陰気で暗いと思われがちな島根がいかにすばらしい歴史と可能性を秘めた世界であるかを、出雲市に生まれエンジニアとして世界を股にかけた兄弟が、(いと)おしみをこめて語った一冊です。 (4月16日)[全文へ]


評・岡田温司(西洋美術史家・京都大教授) ズバリ値段を当てたら、スポンサー提供の電化製品一式を進呈。(まぶ)しく輝く文明の利器の数々が緞帳(どんちょう)の中から賑々(にぎにぎ)しくお目見えする。半世紀近くも前、そんなテレビ番組に(くぎ)づけになっていたことが、本書を読みながら、懐かしくも苦々しく思い出されてきた。そう、著者の言うとおり、われわれは家電神話に踊らされてきたのだ。 (4月16日)[全文へ]


評・橋爪大三郎(社会学者・東京工業大教授) 中国のスパイの総元締めは、国家安全部。部長は耿惠昌、北京の西苑という場所に本部がある。 (4月9日)[全文へ]


評・池谷裕二(脳研究者・東京大准教授) 刺激的なタイトルだ。生物学者である著者が、慎重な実験と考察から「魚は痛みを感じる」と確信する経緯を記した名著である。この結論は、釣りや鑑賞の愛好家のみならず、養殖、動物福祉、立法まで幅広く影響を与えそうだ。 (4月9日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家) 本書は読者の思考を何度も揺さぶるだろう。 (4月9日)[全文へ]


評・岡田温司(西洋美術史家・京都大教授) 「デザイン」という言葉が(ちまた)で踊っている。遺伝子から地球環境にいたるまで。そこにはどこか胡散(うさん)臭さがなくはない。 (4月9日)[全文へ]




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