読者が夢中になる作品を
日本ファンタジーノベル大賞(読売新聞社、清水建設主催、新潮社後援)の第24回の作品募集が始まる。作家の畠中恵さんは「しゃばけ」で2001年、第13回の優秀賞を受賞し、人気作家として活躍する。これまでの小説の枠にとらわれない作品を数多く生み出してきた賞の魅力を語ってもらった前回に続き、今回は畠中さんに創作への思いを聞いた。
――累計500万部を発行した「しゃばけ」シリーズは、江戸時代を舞台に大問屋の若だんな一太郎と妖(あやかし)が事件を解決していきます。時代小説で新しいジャンルを開拓されました。小説を書くようになったきっかけを教えて下さい。
イラストの仕事をしていた時、絵とともに話を書いてみたいと思い、小説家の都筑道夫さんの小説教室に通い始めました。都筑先生にほめてもらったら、賞に応募しようと思っていました。7年ほど通ったところで、都筑先生にほめていただき、日本ファンタジーノベル大賞に「しゃばけ」を応募しました。
――「しゃばけ」シリーズは、文中から江戸の情景が浮かんでくるところも魅力です。創作で工夫されているところはありますか。
江戸時代のものを展示している資料館によく行きます。絵巻物や錦絵などを実際に目で見たうえで、こうした資料をもとに当時の街の様子をおこしていきます。錦絵に描かれている曲がり角が、現在も同じ場所に残っていることもあり面白いです。当時の人がどんなものを食べていたのか、食べものにかかわる資料もよく読みます。
街歩きでアイデア
――ふだんはどのようにして作品を書かれているのでしょうか。
昼間、ストーリーを考えている時は街を歩きます。歩き回ってアイデアが浮かぶと喫茶店に入るなどしてノートに書きとめています。歩き回る間に、大型書店などをめぐって資料集めもします。実際に書く作業は自宅で行います。
――デビュー後、創作について意識が変わったことはありますか。
デビューしてからは特に、読者に面白さが届くようにと思って書いています。エンターテインメント小説は読者あってのもので、読者と向き合って成立すると考えています。
――作品を通して読者に何を届けたいですか。
読んでいる時に夢中になって楽しい時間を過ごしていただけたらと思っています。私自身、夢中になって楽しんできた本があります。学生時代は「三銃士」、もう少し小さい頃は「ゲド戦記」です。「終わってほしくない」と思いながら読んでいました。そういう本に近づきたいですね。
はたけなか・めぐみ |
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1959年、高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒業。2001年「しゃばけ」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。「しゃばけ」シリーズのほか「まんまこと」「つくもがみ貸します」など。 |
主催=読売新聞社、清水建設 後援=新潮社
(2012年3月2日 読売新聞)