「ゲキ×シネ」「五右衛門ロック」の魅力を聞く
古田新太(ふるた あらた)さん、松雪泰子(まつゆき やすこ)さん 俳優
劇団☆新感線の舞台「五右衛門ロック」(中島かずき作、いのうえひでのり演出)が最新のデジタル技術を駆使し「ゲキ×シネ」として映像化され、5月16日から秋にかけて東京・大阪をはじめに全国の映画館で順次上映される。
「五右衛門ロック」は、生バンドの演奏を取り入れるなど音楽に力を入れた新感線の人気“R”シリーズの舞台で、昨年の夏に東京と大阪で約10万人を動員した。
物語は、釜ゆでの刑を逃れた石川五右衛門が、南の島に眠る秘宝を求めて繰り広げる冒険活劇。主役の五右衛門を演じた古田新太さん、ヒロインで女盗賊・真砂のお竜を演じた松雪泰子さんに公演の思い出やゲキ×シネの見所について話を聞いた。
松雪、キューティーハニーキックで古田をKO | |
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舞台人、役者から見た「ゲキ×シネ」の魅力はどういうところにありますか。 古田 舞台はライブなんで、毎日、公演を打つとなると、やっぱり労力が必要なのと、ぶっちゃけ一番でかいのは財力。スタッフが毎日100人ぐらい動かないと作品ができない。それをムービーにすると少し手ごろにご提供できる。地方の演劇ファンには申し訳ないけど、本当は地方に行ってやるのが一番いいんですけども、あれだけのパッケージを持って全国を回るのはかなり難しいんです。(ゲキ×シネで)「こんなことやってるよ」っていうのが少しでも伝わったら。あとは、ミスがカットされますね(笑)。 松雪 劇団☆新感線さんに参加したのは2回目で、今回が初めてゲキ×シネになった作品ですが、出演していても知らないシーンがたくさんありましたし、新宿コマ劇場で見ていらした方はこういうもの見ていたんだな、と新鮮に感じました。あとは、いのうえさんの演出のすごさを細かいところまで堪能できました。改めて、あれだけの人数の出演者がいて、本当にすごいもの作っていたんだな、と感じました。そして、ご覧になってない地方の方にも見ていただけるっていうのは、とてもすごいことだと感じました。 2008年7月23日に新宿コマ劇場で昼・夜公演を15台のカメラで撮影したそうですが、撮影を意識しましたか。 古田 当日は「来ているお客さんに」って形で自分たちはやっているつもりなんで、なるべくカメラのことは意識しないようにしてやってます。役者さんの何人かはカメラ目線を送ってらっしゃる方がいましたけど(笑)。 古田さんが五右衛門を演じるにあたって、リクエストされたことや、ご自身で考えたことはありましたか。 古田 この作品は「五右衛門ロック」という名前はついてますけど、ストーリー上の事件的な問題で言うと、主人公があまり何もしてないんですよね。北大路(欣也)さんと(森山)未來君の話が芯になっていて、その中でやっちゃん(松雪さん)が、かなり峰不二子的な役割で暗躍する。五右衛門は謎解きしているだけで、それも解いたところで……みたいな感じなんですよね。 オイラは、最後の大立ち回りとか、五右衛門が出てきたらちょっと華やかになった、とか、にぎやかになればいいかな、ちゃんとお客さんみんなが拍手できるような感じになればいいなと思ってやってました。 松雪さんは色っぽさと強さを兼ね備えたお竜の役でしたが、何か役作りで意識はされましたか。 松雪 役作りということより、古田さんがおっしゃったように、五右衛門とお竜がシーンを展開していく中での狂言回し的な存在で、お竜は五右衛門を引っ張って動かしていく役割だったので、シーンがパッと変わっていくような登場の仕方ができたらいいのかなと思いながらやっていました。 松雪さんがかなり足を見せているシーンもありましたけど、古田さんから見て、ここは色っぽかったというシーンはありますか。 古田 オイラが好きだったのは、キューティーハニーキックですね。 最後のほうで江口さんと森山さんを加えて4人で見得(みえ)を切るシーンはリズムや間合いが難しかったのでは。 松雪 まず、人生で見得を切ったことがなかったので、「見得ってなんですか」と古田さんに質問したところから稽古場で始まったような状態で。どうやってかっこ良くしたらいいのかなって、家で何回も見得切って、練習しました(笑)。 古田 あんまり普通のお芝居でも見得切ることないもんね。 松雪 はい。 古田 歌舞伎か新感線ぐらいしかないんじゃないかなと思うんで。 ゲキ×シネになったことで何回でも繰り返し見たいシーンはありますか。 古田 一幕ラストですね。北大路先輩とやっちゃんとが歌って、そこから五右衛門が洞窟に連れて行かれて、最後、中空に浮かぶやっちゃんが歌っている後半の流れは好きですね。北大路さんと初めて刃を合わせるところでもあるし、素晴らしいですよ。失礼な話ですけど、あのお年で、あのスピードの殺陣(たて)ができるのはちょっとかっこいいですね。 松雪 すごい。 古田 映像だと、切り取って編集が可能ですけど、ライブでチャンバラをすると「ちょっと待って」ができない。なるべくならやりたくないと嫌がる俳優さんは多いんです。 松雪 美しかったですものね。 松雪さんは。 松雪 同じく一幕ラストのシーンは、欣也さんとのデュエットだったので、いろいろな意味でドキドキしながらやっていましたね。すごく思い出深いシーンです。でも一番大好きなのは、二幕の最後に、五右衛門が「五右衛門様だぁ!」って登場するシーン。いつもそでから見て「よし!」と思い、舞台に飛び出してたんで大好きなんです。 新感線はここ数年いろいろな役者さんを招いて公演を行っていますが、古田さんから見て今回のチームの特徴は。 古田 やっちゃん、(川平)慈英、エグっちゃん、(濱田)マリちゃん、全員歌える人たちだし、慈英と未來が出たらタップダンスやってもらいたいとか。できれば「全面的に派手な感じのチームで行きたいな」っていうのがあったんですよ。みんな色が違うし、押し出しの強い人たちが多い。 松雪さんが印象に残っていることや、印象に残っている共演者の方は? 松雪 すごい役者さんたちばかりでしたし、毎日、皆で楽しく運動会をしていたような思い出です。印象に残っているのは、欣也さんは舞台の上に立ってらっしゃるともちろんかっこいいんですけど、稽古場ではすごくチャーミングな方で。稽古場の端で家から持ってきたおにぎりを食べながら、デュエットのパートの部分をイヤホンで聴きつつ、歌ってらっしゃったのがすごく印象に残ってます。「あ、ごめん、一緒にもうちょっと練習してね」とか優しく言ってくださったりして。 古田 すごく練習する方でしたよね。 松雪 はい、すごく。 古田さんは以前、「自分は舞台人なので、あとに作品が残るのは少し恥ずかしい気がする」と語ってましたが、今回、ゲキ×シネという形で後世に作品が残っていくことへの感想は。 古田 ここ10年ぐらい、DVDやビデオが売られてるんで。根っこは恥ずかしいですけど、それはそれで楽しんでいただけたらなぁ、と思っています。 ゲキ×シネをご家族で見たりは。 古田 見ないですよ!(笑) 松雪さんは、どなたかと見に行かれる予定は。 松雪 息子が五右衛門大好きだったので、たぶん連れて行ってあげたら喜ぶだろうと思います。 古田 今回の五右衛門は、ちびっ子でも安心して見られますからね。 古田さんから見た松雪さん、松雪さんから見た古田さん、自分だけが知ってるというエピソードを教えていただければ。 古田 なんだろう。しょっちゅう飲んでるから。 松雪 そうですね。 公演期間中に飲みに行く元気の素(もと)、体力作りの秘訣(ひけつ)はありますか? 古田 いちいち忘れる、ことですよね。1日終わったら、毎日打ち上げてその日のことは忘れちゃう。明日、また緊張してやればいいし、必ず自分の中でリセットする。その方が、ゆっくり眠れるような気がするんですよ。「ああ、あんなことしちゃった、こんなことしちゃった」って思いながら家に帰ってご飯食って寝るよりも。 松雪 そうですね。 古田 酒飲んで「お前、あれはねーだろう」ってゲラゲラゲラ、みたいなことをするとちょっと気も楽になるし。たまには「ちょっとああしてみたら」「そうだね」みたいな、ためになる話もね。 公演中、どのぐらい飲みに行かれてたんですか? 松雪 どうでしたっけね。もう毎日飲んでいたからよく分からないです。 古田 7〜8時間は普通にあったもんね。日曜日の昼公演が終わったら、月曜日は休演日なので、4時、5時ぐらいから飲み始めて、気がつくと12時普通に回ってますから。10時から飲もうが4時から飲もうが、終わり時間は一緒ですから(笑)。2時ぐらいになったら帰るみたいな。 お酒の席で話が出て、舞台に反映されたアイデアはありましたか? 古田 座長(いのうえひでのり)や未來、やっちゃんと飲む機会が多かったんだけど、ああしてみようみたいなのはよく出てましたね。 舞台という限られた空間で演じることには、どんな魅力がありますか? 古田 テレビや映画だと一回勝負。そのシーンやるのに、どれだけテンションを上げてもっていけるか、なんですよね。でも、舞台の場合、また明日もやらなければいけないし、毎回本番だから徐々に作品を上げていく、いろいろな工夫を積み重ねていく、役者としての喜びがありますよね。ムービーは、自分の一番いいところをチョイスしてもらえる喜びがある。そこはやっぱり楽しさが違うと思うんですよ。これはオイラが思うに、舞台は限りなく役者のものであって、映画は限りなく監督のものであるな、と。 松雪 舞台の出演は少ない本数ですが、それをすごく感じます。どんどん日々変化していきますし、演じられることの喜びを体験できる場は舞台だなって。映画は監督によって色が様々ですし、手法も様々ですから。 「五右衛門ロック」を見た方、見てない方も全国にたくさんいると思うんですが、メッセージを。 古田 見た方が、また見に来られるっていうのは面白かったからだと思うんですよ。もう一度、「面白かったなぁ」というのを追体験というか再確認して頂いて。初めて見る方は、新感線のレパートリーの中でも一番分かりやすい、とっつきやすい作品で、賑やかな楽しいお芝居なので「こんなことやってる劇団だな」みたいなことを楽しんでいただけたらうれしいです。また機会があったら生を見てほしいですね。 松雪 先日、ゲキ×シネの映像を見て、出演している私たちでさえ知らないところがたくさんありました。 古田 うん。 松雪 近くで見られる面白さがあると思いますし、きっと2000人のキャパの新宿コマの一番後ろのほうで見ていらっしゃった方は分からなかったところもたっぷり楽しめると思うし、新たな発見ができると思います。 古田 あとゲキ×シネが面白いのはね、DVDと違って、いろんな人たちと劇場で一緒に見るので人の反応とかも感じられるわけですよ。ほかのお客さんが笑ったりすると「今、なんで笑ったの?」みたいなのがあるんですよね。DVDをご家庭で一人で見ていたらそれはないので、違う雰囲気で声を出して笑えますね。 |
ゲキ×シネ 新感線☆RX 「五右衛門ロック」
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
作詞:森雪之丞
出演:古田新太 松雪泰子 森山未來/江口洋介/川平慈英 濱田マリ/橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと /他 北大路欣也
5月16日(土)から関東(東京・新宿バルト9ほか)・関西(大阪・梅田ブルク9ほか)で公開
8月29日(土)から全国にて順次公開
公式サイト:http://www.goemon-rock.com/
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