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『本当は恐ろしいグリム童話』 桐生操著

大胆な解釈の大人の童話

 幼い頃は童話が好きで、実家にあった全集をよく読んでいた。

 中でも、いじめられていた主人公が最後に幸せをつかむ「白雪姫」や「シンデレラ」の結末に、ホッとしたことをおぼろげに覚えている。だがこの本は、そんな美しい思い出を、見事に打ち砕いてくれた。

 白雪姫は父である王と関係があったという設定で、嫉妬する母に毒リンゴを食べさせられた姫は、焼けた鉄の靴を履かせて報復する。シンデレラをいじめた姉たちは、ガラスの靴を履くために自らの爪先やかかとを切り落とし、最後は失明してしまう。少女漫画風の挿絵とは裏腹に、子供には見せられない内容だ。

 もちろん、これらはグリム童話の原典ではない。1812年初版の〈残酷で荒々しい表現法を残しながら、その奥に隠された深層心理や、隠された意味を徹底的にえぐり出して〉、著者が大胆にデフォルメしたもので、解釈の根拠となる学説なども示されている。

 猟奇趣味的と批判する声もあるが、描かれる嫉妬心やエゴ、残酷性が、人間の持つ一面であるのも確か。いろいろと考えさせられる大人の童話だ。(早)

2012年4月13日  読売新聞)

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