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陸自日誌

(2)遺体搬送か 物資輸送か

相次ぐ要望 車両配分に悩む

◆3月20日(日)


 震災後に「孤立地域」に分類された、牡鹿半島の先にある網地島(あじしま)(宮城県石巻市)へ。ツイッター(簡易ブログ)で「停電で夜は暗くて寒い。このままではお年寄りが死んでしまう」と書き込みがあり、物資が届いているかどうか確認に行きました。

 避難所にはラーメン、「いも汁」の匂いがし、おにぎりの山。食べ物には困っていないようです。ガス、井戸水も使え、自衛隊のヘリが物資を届けています。

 話をうかがうと、皆さん話すこと話すこと。70歳ぐらいのおばあちゃんは気が動転して山の方へ行ってしまい、暗闇の中、心細い思いでようやく避難所にたどり着いたとのこと。

 「大変な思いをしましたね」と聞き続けると、「自衛隊さんには親切に面倒を見てもらって、ほんど感謝してます」と言ってくれました。皆さんが一番求めているのは人とのつながりではないか。自分の感じた恐怖や喜びを他の人と分かち合いたい、という「気持ち」のように感じられました。

◆3月21日(月)

 本日は、ある市と遺体の搬送・埋葬の調整に追われました。なかなか難しい作業です。埋葬は市の契約業者に任せることとし、搬送は自衛隊が行うことに。遺体は600体。丁寧に埋葬するため、毎日60体を10日間かけ、トラック4台、各台20人前後で搬送することになりました。

 調整中、他の市や町からも同じ依頼がきました。今後、他の自治体からも来ると、かなりの自衛隊車両を振り向ける必要が出てきます。現在、遺体の捜索を行いつつ、徐々に生活支援へ重点をシフトしていますが、その輸送力の何割かが遺体の搬送に充てられると、資源配分の問題が出てきます。

 一昨日、沿海の現場を訪れると、強烈な臭気がありました。遺体の埋葬は待ったなしです。他方、業者の話を聞くと、民間の物流復旧にはあと1週間はかかるそうです。それまでは自衛隊の物資輸送も必要で、どちらを取るべきか、悩ましい判断です。現場としては、遺体の搬送・埋葬は可能な限り、自治体と厚生労働省で対応してもらえると助かります。引き続き、防衛省から厚労省へ働きかけていただけますと幸いです。〈陸上自衛隊東北方面総監部の須藤彰政策補佐官の日誌から抜粋しています〉
(2011年5月20日読売新聞掲載)

 ◇須藤 彰(すどう・あきら) 1998年東大文卒。防衛庁(現防衛省)入庁、英ケンブリッジ大国際政治学部修士修了、運用支援課部員、陸上自衛隊東北方面総監部政策補佐官。東京都出身。

 【関連記事】被災地で自衛隊の人たちは何を食べていたのですか?

2011年6月17日  読売新聞)


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