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「表現派」村主、次へ希望

 村主の得点は伸びなかった。大きなミスは、3回転ジャンプがひとつ回転不足になっただけ。スピードを落とすことなく滑り終えた村主のスコアに、会場から不満の声が上がった。

 だが、本人はある程度、覚悟していたのだろう。演技直後に顔を覆った。その訳を聞かれ、「現状としては出し切ったけど、滑りという意味で詰めが甘かったかもしれない」。新採点で得点を稼ぐには、ビールマンスピンなど柔軟性を生かした技が有利だ。「努力してきたけど、適応するには少し時間がかかるのかな」と、垣間見た能力の限界に悔しさをのぞかせた。

 「表現力が足りない」と意識したのは16歳の時だった。当時の村主はジャンプが売り物で、振り付けと言えば曲に合わせ、ただ手足を動かすだけだった。そんな少女が、繊細な振り付けで知られるカナダ在住の著名振付師ローリー・ニコルに振り付けを直談判した。

 当時のあこがれは、米国のスター、ミシェル・クワン。この女王を振り付けたニコルならば、自分を変えてくれると信じていた。ニコルも村主の能力を見て、簡単なプログラムを与えてくれた。それでも当時の演技は「ただ、止まって手足を動かしているだけ」(関係者)という出来だった。

 しかし、村主は、少しずつ「ニコルの世界」を演じ始めた。「表現派」「演技派」の村主が誕生した。五輪の舞台で点数は抑えられたとしても、村主は村主の世界を演じきった。

 決して絶望はしない。

 「気が強いのかな。しつこいのかな。ないもの(能力)はどうしようもない。どうすればいいのかを考えて、それが原動力になっている」

 3月にカナダ・カルガリーで開かれる世界選手権にはもちろん出る。東京開催となる来年の世界選手権も、さらに4年後のバンクーバー五輪についても「一年一年考えることになるが、バンクーバーまで頑張りたい」ときっぱり言い切った。「希望の道」は、終わらない。(竹内誠一郎)

2006年2月24日12時54分  読売新聞)
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