書評
評・管啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) 津波から一年余が経過した春の三陸沿岸部を車で走ってきた。海岸線の道は曲がりくねり波打ち新緑と海の青のあいだを美しくつづく。湾ごとに、入江ごとに、町があり集落があり、その大きな部分が途方もない破壊をこうむっている。志津川、雄勝、女川。
評・松山 巖(評論家・作家) 「Kのことを書く。Kとは、ぼくの死んだ配偶者で、本名を桂子といった」。この一節が
評・橋本五郎(本社特別編集委員) 卓抜な「書き出し」である。死者・行方不明者10万5000人に及んだ関東大震災に「希望」を見いだす人と「絶望」を覚える人がいた。それぞれの代表が、譲り合いと相互協力の姿に希望を託した芥川龍之介であり、貧しき者がさらに苦しむことに怒りを覚え「革命」に
評・小泉今日子(女優) 1981年、私は高校一年生だった。もう子供じゃないけれど、まだ大人でもない。勉強が嫌いで遊んでばかりいた劣等生だったけれど、心も身体もエネルギーに満ちていて何をしていてもゲラゲラ笑えるほどに楽しかった。でも本当は気付いていた。いつか大人にならなきゃならないということに。それは、遠くの空に浮かんでいる大きな黒雲が少しずつ自分のいる場所に近づいてくるような恐ろしいイメージだった。 (6月18日)[全文へ]
評・畠山重篤(カキ養殖業) 本書を開いていると昆虫オタクの孫たちがやってきた。木の葉を切り取っているアリの写真を見て、“これハキリアリでしょう、テレビで見たことがある”と歓声をあげた。 (6月18日)[全文へ]
評・細谷雄一(国際政治学者・慶応大教授) 「科挙制度の長い歴史を有する中国において職業外交官はいかにして誕生したのか」。本書はこの問いに答えることを目的とする。近代中国外交を理解する上で、はたして中国独自の歴史的伝統と、制度的な近代性とのいずれを重視すべきだろうか。なぜ歴史的伝統の重みを持った中国で、職業外交官は誕生したのか。 (6月18日)[全文へ]
評・池谷裕二(脳研究者・東京大准教授) カラヤンが好きだ――いや、わかっている、クラシック愛好歴30年のマニアとして少々恥ずかしい発言なのは。存在が大きすぎる。存命中はこの絶対巨匠を否定することがステイタスという風潮さえあった。影響の全貌を捉えるにはまだ早いのか、没後20年
評・朝吹真理子(作家) 本書は書名通り、われわれが普段使っている現代の言葉からそれに対応する古語を引くことができる。用例と出典だけが記載されているシンプルなつくりであるが、補注や付録、解説など充実している。 (6月18日)[全文へ]
評・角田光代(作家) 小説の中心にいるのは三人の小学生。両親がおらず、風俗店勤務の姉と暮らす梅田、父親がおらず、母親がスナックを営んでいる、歌のうまい松岡。ボクシングジムに通う母親のいない竹村。先生からは嫌われ、クラスメイトからは黙殺されている三人組だが、次々と彼らなりの遊びを見つけ出しては本気で熱中する。大人たちはそんな彼らにかまうことなく、それぞれ勝手に生きている。梅田の姉の
評・三浦佑之(古代文学研究者・立正大教授) 大地の誕生から語り出される神々の物語と、
評・管啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) 風の
評・尾崎真理子(本社編集委員) クレジットカードの登場は1950年。今では収入以上の買い物も30年の住宅ローンも、個人の裁量。日本を含む多くの国の政府が、未来に負債を負いながら現状をしのぐ。 (6月11日)[全文へ]
評・湯本香樹実(作家) 小学生の頃、「勉強する気になれないときは、まず鉛筆を削ってみましょう」と雑誌で読み、削りに削った。おかげで、ナイフを使って上手に鉛筆を削れるようになった。 (6月11日)[全文へ]
評・星野博美(ノンフィクション作家・写真家) 緑に囲まれ、設立されたばかりの鳥取環境大学。動物行動学が専門の著者は授業中、思いつきで学生に向かい「キャンパスでヤギを飼ってみてはどうですか」と話す。そして授業が終わった数分後、ヤギ部が誕生したのである。 (6月11日)[全文へ]
評・ロバートキャンベル(日本文学研究者・東京大教授) かつて、と言っても五〇年ほど前のことだからわりあい最近、日本では小説と並ぶように戯曲もふつうに読まれていた。 (6月4日)[全文へ]
評・角田光代(作家) もしあなたが熱心な吉田修一読者であるならば、読みはじめてすぐ、これまで読んできた作品と本作の違いに大いに驚き、けれどすぐに作者がだれかということなどすっぱり忘れて、小説世界に入りこむだろう。私はそうだった。 (6月4日)[全文へ]
短評
- 『「憲法」改正と改悪』 小林節著 (6月18日)
- 『おれ、バルサに入る!』 久保建史著 (6月18日)
- 『図説日本国憲法の誕生』 西修著 (6月11日)
- 『恩返し』 桂歌丸著 (6月11日)
- 『山伏と僕』 坂本大三郎著 (6月11日)
- 『HOMETOWNEXPRESS』 「祝!九州」写真集 (6月4日)
- 『世界で1000年生きている言葉』 田中章義著 (6月4日)
- 『古代人なるほど謎解き一〇〇話』 瀧音能之編 (6月4日)
- 『非常事態の中の愉しみ』 小林信彦著 (5月28日)
- 『東京タワーならこう言うぜ』 坪内祐三著 (5月28日)
ニュース
- 「マンガ飯」「小説飯」料理本が人気 (6月22日)
- 大分の「さかなやの四季」、30年ぶり改訂 (6月22日)
- 祖父が語る豪快なホラ話 (6月22日)
- 日本SFハリウッドへ…小説2作品を映像化 (6月21日)
- 不思議なお店の童話 (6月21日)
著者来店
「週刊文春」で2006年から連載してきた「読書日記」をまとめた書評集。「僕のは書評じゃない。本を入り口にして、読者と楽しい世界を共有しているだけ」と謙遜するが、ベッドの両脇には本が高く積まれ、「近くにないと不安になる」ほどの本の虫。長い人生経験に、様々な人物を演じてきた俳優ならではの人間観察が加味された味わい深い文章が並ぶ。 (6月19日)[全文へ]
- 『柔らかな犀の角』 山崎 努さん (6月19日)
- 『会社員とは何者か?』 伊井直行さん (6月12日)
- 『影の部分』 秦早穂子さん (6月5日)
- 『十津川警部とたどる時刻表の旅』 西村京太郎さん (5月29日)
- 『むかし原発 いま炭鉱』 熊谷博子さん (5月22日)
海外ミステリー探検隊〜堂場瞬一のコラム〜
- 毛色の違う「北欧警察小説」2本 (6月20日)
- 物語混濁のハードボイルド (6月6日)
- 異色のラインアップ…アクション巨編に奇妙な味わい (5月23日)
- 女性主人公のキャラ一発勝負 (5月8日)
- 早くも豊作の予感 (4月18日)
川の光2
読売新聞朝刊で連載している小説「川の光2」の読書ガイドです。
- 【担当記者日記】「小説トリッパー」に対談を掲載 (6月18日)
- 【名場面集】マルコは、酒を断つと誓ったが…… (6月18日)
- 【担当記者日記】読売歌壇をご覧下さい (6月12日)
コラム
HONライン倶楽部
環境問題、高齢化社会、女性と家族……。旺盛な好奇心で問題作を次々と発表しながら、有吉佐和子さんは53歳で急逝しました。しかし、その作品は古びるどころか、ますます現代性を帯びています。 (6月5日)[全文へ]
ポケットに1冊
随筆家の佐々木久子が約30年にわたって編集長を務めた「酒」は、火野葦平や檀一雄らそうそうたる作家が応援した雑誌だ。掲載されたエッセーから、昭和の作家を中心に38編をまとめた。 (6月20日)[全文へ]
記者が選ぶ
- 『深海魚雨太郎の呼び声』 丸山健二著 (6月20日)
- 『オリンパスの闇と闘い続けて』 浜田正晴著 (6月20日)
- 『プロ野球復興史』 山室寛之著 (6月13日)
- 『鉄道復権』 宇都宮浄人著 (6月11日)
- 『森と草原の歴史』 小椋純一著 (6月6日)
アーカイブ
コミック・マガジン
マンガは僕の友達だった
「課長の椅子を用意した」。大手電機メーカー「初芝電器産業」の島係長は、突然、上司にそう告げられる。34歳での昇進は、同期のなかでも早いほう。昇進は3か月後、その間「とりあえず公私ともに大過なくすごさねば」と、はやる気持ちを抑える。だが、うれしさは隠せない、思わずガッツポーズらしきものも出るほど。 (6月14日)[全文へ]
- マンガの中の「サラリーマン」(3) (6月14日)
- マンガの中の「サラリーマン」(2) (5月24日)
- マンガの中の「サラリーマン」(1) (5月10日)
- 赤塚不二夫さんのことを書くのだ(5) (4月26日)
- 赤塚不二夫さんのことを書くのだ(4) (4月12日)
本こども堂
子どもたちへ
もりうちすみこさん 56 霊媒師は、
- 原作の魅力 きちんと届けたい (6月19日)
- 『ピアノはっぴょうかい』の著者、みやこしあきこさん (5月1日)
- 【私の一冊】『しろくまちゃんのほっとけーき』 (4月3日)
- 風景や生活の歩みの絵を見て (3月6日)
- 自分自身でいい絵本見つけて (1月17日)
読みました
- 『最後の小学校』 秋山忠嗣(あきやま・ただし)著 (5月29日)
- 『待ちつづける動物たち――福島第一原発20キロ圏内(けんない)のそれから』 太田康介・著 (5月29日)
- 『スティーブ・ジョブズの生き方』 カレン・ブルーメンタール・著 (4月10日)
- 『開催(かいさい)!世界史(せかいし)サミット』 浅野典夫(あさの・のりお)著 (4月10日)
- 『ヤモリの指から不思議なテープ』 石田秀輝・監修 (3月13日)
- 『うま味(み)って何だろう』 栗原堅三・著 (3月13日)
- 『「リベンジする」とあいつは言った』 朝比奈蓉子・著 (2月7日)
- 『空色の凧』 シヴォーン・パーキンソン・著 (2月7日)
- 『怪物はささやく』 パトリック・ネス著 (1月11日)
- 『あかねさす』 加藤千恵著 (1月11日)
本だな
- 『しごとば 東京スカイツリー』 鈴木のりたけ・作 (6月5日)
- 『イッツ・ア・スモールワールド みんな となりどうし』 アーサー・ビナード・日本語詩 (6月5日)
- 『笑顔のどうぶつ園』 松原卓二・著 (6月5日)
- 『こぐまのクーク物語 空のピクニック』 かさいまり・作 (6月5日)
- 『ようちえんがばけますよ』 内田麟太郎・文、西村繁男・絵 (4月17日)
- 『こころの家』 キム・ヒギョン文、イヴォナ・フミエレフスカ絵 (4月17日)
- 『くまのごろりん あまやどり』 やえがし なおこ作、ミヤハラ ヨウコ絵 (4月17日)
- 『はばたけ、ルイ!』 ミュリエル・ハリス・ワインスティーン作、フランク・モリソン絵 (4月17日)
- 『くまのがっこう ジャッキーのゆめ』 あいはら ひろゆき作 (3月20日)
- 『給食室の日曜日』 村上しいこ作 (3月20日)