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「外事警察 その男に騙されるな」主演 渡部篤郎

自分を捨て 非情に徹す

「今は同世代の人たちがプロデューサーになって、意欲的なドラマをたくさん作っていて、楽しいですよ。僕にとって、とてもいい状況です」=高橋美帆撮影
外事警察に復帰した住本(渡部=写真左)は、工作員の妻(真木=同右)の弱みを握り、利用しようとする

 警視庁公安部の諜報(ちょうほう)部隊を描く「外事警察 その男に(だま)されるな」が公開されている。2009年にNHKで放送された同名ドラマの映画化だ。テレビ版に続き、任務遂行のためには非情な手段もいとわない「公安の魔物」にふんしたのは、渡部篤郎。日本映画には珍しいダークヒーローを、どう演じたか。

 「最初にドラマに出演した時は、日本版CIAという、これまでにない物語に興味を持った。謎解きだったり、拳銃で撃ち合ったりじゃなく、事件を未然に防ぐ。大人が楽しめるドラマになると思いました」

 「基本的にドラマとの違いはありません」と話すが、スケールは大きくなった。テーマは核を用いたテロ。朝鮮半島から濃縮ウランが流出し、日本に危機が迫る。公安部外事課の住本(渡部)は、日本に潜入する工作員の妻(真木よう子)の弱みを握り、心を操ってスパイに仕立てようとする。

 住本は、表情を変えず、平気でうそをつき、協力者に危険を強いる。何を考えているのか、最後まで分からない。「(堀切園健太郎)監督に、僕自身が『つかめない』イメージがあると言われた。それがうまく反映されているかも」。観客にとって、感情移入しにくい主人公だが、「欧米にはダークヒーローが活躍する作品がある。人間的にどうこうじゃなく、エンターテインメントとして、日本でももっと増えていい」と話す。久々に住本を演じることについては、「ドラマのファーストシーンで、きちっとキャラクターは出来ている。難しくはなかった」。

 事件の舞台は、日本にとどまらない。韓国ロケが行われ、韓国語で演技し、人気俳優キム・ガンウとも共演した。「韓国の俳優はすごく優れている。映画文化は正直、娯楽性という意味で、あちらの方が上」。だが、今回の作品は「いい線までいけたんじゃないか。アジアの映画、特に韓国映画に、娯楽として肩を並べられたと思う」。

 この作品の撮影前は、中国のチャン・イーモウ監督の「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー」で、クリスチャン・ベイルと共演した。世界的な巨匠と、ハリウッド・スターとの仕事にも、「演技が楽しくてしょうがない」「緊張なんてしているヒマはない」と話す。「現場で何が出来るか、お客さんにいかにいいものを届けるか、が一番の目的。そのために省いていくのが、緊張だったり、自分の価値観だったりする。この仕事は、自分を捨てることだと思いますよ」(小梶勝男)

2012年6月15日  読売新聞)

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