超高級居酒屋 魚とセロス、ピノの競演6月6日(東京・六本木の1つ星「青華 こばやし」で)旨い魚を食わせる店はたくさんあるが、ここは別格だ。 知人とともに訪れた東京・六本木のミシュラン1つ星「青華 こばやし」。小林雄二さんの、素材を見る目と、調理の技は鋭い。並の寿司屋の及ぶところではない。「超高級居酒屋」と呼ぶ人がいるのもわかる気がする。 カウンターとテーブルで2組の客しかとらない。小林さんが1人で調理から皿出しまでこなすから、内容を考えれば、値段も控えめ。隠れ家として使いたいが、予約は当分先まで埋まっているとか。 最初の蒸しウニは北海道産。塩で食べる。モズクは沖縄。蒸しアワビのワサビは極太の御殿場産をすりおろす。驚いたのはスッポン。こんなにも上品な味わいだったのか。天然もののピュアさと切れはやはり違う。たまにしか市場に入らない高知産だという。 この段階で、心は満ち足りているのだが、これからが本番。分厚く切ったまこがれいの、淡白でいて、複雑な脂ののり具合。日本人に生まれてよかった。カツオはわけぎとみょうがを散らして。口直しにちょうどよい。炭火で焼いた白身のうまいこと。おこぜのから揚げの身のしまり具合と弾力性に悶絶した。 最後の牛肉の炭火焼を除けば、徹頭徹尾、魚と野菜。もうこれはシャンパーニュしかない。お酒をサービスする余裕はないから、持ち込みも歓迎だそうだ。久しぶりにジャック・セロスのシュブスタンス。デゴルジュマンから4年しかたっていないが、ようやくこなれたところだった。 セロスのシャンパーニュは、2年ほどで飲む準備が整い、3年目から微妙に進化していく。いろいろ飲んだ結論がそれだ。シードルかと思うほど濃い黄金色。キラキラと輝くミネラル風味。ほぼノンドゼにもかかわらず甘美で焦点の合った味わい。濃厚で複雑な香りはほとんどのブラン・ド・ブランを退ける。飲み始めたころの感激は薄れたが、常に飲み手の魂に語りかけてくる。 シャンパーニュで1本通す手もあるが、せっかくなのでブルゴーニュの赤も。おこぜや牛肉とはよくあった。アンヌ=フランソワーズ・グロ(A-F グロ)のヴォーヌ・ロマネ・オー・レア。アンヌはジャン・グロの長女として生まれ、夫のフランソワ・パランとともにドメーヌを興した。 グロ家は長男ミシェル、次男ベルナール、従姉のアンヌというドメーヌに枝分かれしている。微妙にスタイルが違うが、A-F グロはエレガントサイドに寄っている。1995年は難しい年だが、冷たい酸とタンニンを丸く仕上げている。見直した。1・63ヘクタールのオー・レアの畑は、ミシェル・グロのプルミエクリュのクロ・デ・レアに接した村名格。上品で丸い。 力のある白身の脂とも相性が良かった。これくらい繊細に仕上がって、熟成していれば、魚とも意外にいける。 (2012年6月13日 読売新聞)
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