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子ども
[見聞録2012]

幼児教育はいま (3)「ぶくぶく」やってみよう

 緑豊かな東京都東久留米市の住宅街にある「自由学園幼児生活団幼稚園」。3〜4歳の14人が、神妙な表情でコップを握っていた。

 「口の中にご飯が残っていると虫歯になっちゃいます」。説明するのは5歳組の2人。食後に行う「ぶくぶくうがい」の実演だ。

 練習に使うのは、古めかしいトタンの流し台。「お口をきれいに洗いましょう」と繰り返す「ぶくぶくうがいのうた」も、どこかレトロな味わいだ。

 「自分のことは自分でできるようにする。なぜやるか理解できるよう、よく説明する。同じことを何十年も続けているんです」。幼児生活団責任者の浅野祥子さん(61)が教えてくれた。

 伝統的に生活の基本を重視してきた日本の幼児教育。その中でも、ここは筋金入りだ。日本初の女性記者とされ、大学レベルまでの一貫教育を行う自由学園を創立した羽仁もと子は、「生活即教育」を提唱。日々の暮らしに学び「よい生活者をつくる」という理念は、1939年設立の幼児生活団にも受け継がれている。

 当初、生活団は週1回集まる場だった。戦後は活動日が増え、2007年に週5日制の幼稚園に。今も年齢別に週1回、「ふんぱつこどもの日」を設け、美術や音楽活動のほか、「生活講習」に集中して取り組む。

 手洗いや歯磨き、衣服の着脱、畳み方。紙芝居や実演でやり方や目的を丁寧に説明し、家庭でも練習。できたら「励み表」にシールを貼る。「ぱっと寝、ぱっと起き」「出しっ放し、やりっ放しをなくす」などは、保育園に通う我が息子だけでなく、大人の私も自信がない。風呂敷包みや野菜栽培、ハトの世話も子どもたちが行う。

 今どきの幼児には厳しすぎる――。そう感じる保護者も増えているようだ。「今の親は結果を求める。できた、できないではなく、子どもが自分で考えて頑張った過程が大事。そう言葉にして伝えるようになりました」と浅野さんは言う。

 この春入園した藤田直君(3)の母瑞子(みずこ)さん(46)も、「トイレに一人で行く」課題を「まだ無理」と感じていた。だが生活団で習って4日目、直君は一人で済ませることができたという。「やってみようと決心し実行できた3歳児の頑張りに感心しています」。そんな手紙を担任に寄せた。

 「生活の基本」は、大人でも揺らいでいる時代。幼児生活団には、親が学ぶ場も用意されている。(編集委員 古沢由紀子)

2012年6月28日  読売新聞)

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