介護ベッド 手すりに危険
首や手足の挟み込み多く
高齢者や体の不自由な人が使う介護ベッドの事故が、家庭や施設で相次いでいる。転落防止用の手すりに首を挟むなどの事故だ。介護事業者や、ベッドメーカーの業界団体が対策に乗り出した。
和歌山県内の家庭で今年2月、80歳代の女性が、介護ベッドの手すりの下部とマットのすき間に首を挟まれて、窒息死する事故が起きた。何らかの原因で女性がベッドから転落した際、首が引っかかったらしい。
経済産業省などによると、介護ベッドの事故は、メーカーによる国への報告が義務づけられた2007年度以降に死亡事故28件、重傷事故31件が起きている。計59件のうち家庭での事故が30件(死亡8件)と最も多い。
事故の多くは、手すりに関係するもの。利用者が無理な体勢でベッドの下にある物を取ろうとして、手すりと手すりのすき間に首を挟んだり=図〈1〉=、ベッドから起きあがる際にバランスを崩し、手すり内の空間に頭が入って窒息したりした。利用者の手や足が手すり内に入っている状態で、介護する人がベッドの背を上げ下げする操作をし、手や足を挟んでしまった例=図〈2〉=もある。
介護ベッドメーカーなどで作る医療・介護ベッド安全普及協議会(東京)は、「認知症などのためベッド上で予測できない行動を取る人や、障害のため自分で体勢を保てない人がベッドを利用する場合は、特に注意が必要」という。
協議会は5月、事故の事例や予防策を具体的に紹介した動画「医療・介護ベッドに潜む危険」(9分41秒)をつくった。また、「医療・介護ベッド安全点検チェック表」も作成。「手すりと手すりのすき間が、大人の首が入り込まないとされる6センチ未満」など四つのチェック項目を挙げている。動画とチェック表は協議会のホームページ(http://www.bed-anzen.org/)で公開している。
2009年に介護ベッドの日本工業規格(JIS)が改訂され、安全基準が強化された。しかし、旧規格のベッドがかなり多く使われているとみられる。
どうすれば事故を防げるか。手すりのすき間の広さを確認し、挟み込み事故の危険性がある場合、クッションや毛布ですき間を埋めたり、すき間全体をカバーで覆ったりする。メーカーによっては、すき間カバーなどの商品も扱っている。ベッドの背を上げ下げするときは手足が手すりから出ていないか確認するなど、慎重な操作も重要だ。
介護事業者も対策を取っている。横浜市などで介護事業を行う「コープかながわ」は、介護ベッドを貸し出している家庭を3〜6か月に1回訪問し、すき間カバーが適切に利用されているかなどを点検している。訪問介護事業では、ヘルパーやケアマネジャーに対し、事故を防ぐための研修を強化する計画だ。
事故予防に取り組む介護付き有料老人ホーム「芙蓉ミオ・ファミリア町田」(東京都町田市)の看護科長の小倉隆子さんは「事故は体の動きが鈍くなりがちな夜から朝にかけて起きることが多い。ベッド利用者の身体の状況を把握し、行動の特性を見極めることが大切」と話す。(岡安大地)
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