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書評


ロバートキャンベル(日本文学研究者・東京大教授) 「雲をつかむ話」の「雲」とは何だろうか。「話」であれば「とらえどころがない」が特徴だと思うが、山中で見る雲は「木のまわりを巡り、岩を抱くように滞ったかと思うと、幕のように張り、練り絹のようにしなる……」(斎藤拙堂〔一七九七―一八六五〕「雲喩(くものゆ)」、もと漢文)、というように、むかしから自在に湧き、流れて、つかめなさとは別に何かに似ているところが日本語の「雲」の身上である。 (7月2日)[全文へ]


評・辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト) 国力が低下していると言われていますが、日本には妖怪がいるからたぶん大丈夫です。 (7月2日)[全文へ]


評・橋本五郎(本社特別編集委員) 〈僕は君のすべてを知っているわけではない。君について九十九%は無知であると言ってもよい。しかし僕は最後の一%だけは知っているつもりだし、その一%に関する僕の知識において、僕は君全体を知っていると断言できる〉 (7月2日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家) 幼い子にクレヨンと紙を与え、描いてごらん、といえば、子どもはいろんな色を使い、自由に空想を働かせて遊ぶ。これが美術の原点だ。 (7月2日)[全文へ]


評・橋爪大三郎(社会学者・東京工業大教授) 理論物理学の仁科芳雄博士は苦悩していた。陸軍将校がサーベルをがちゃつかせ、ウラン爆弾はまだできないかと、矢の催促だ。 (7月2日)[全文へ]


評・三浦佑之(古代文学研究者・立正大教授) 85歳の今も研究意欲に(あふ)れた考古学界の大御所が、現在もっとも注目されている邪馬台国について論じている。 (7月2日)[全文へ]


評・尾崎真理子(本社編集委員) 東京子ども図書館を拠点とする読み聞かせの専門家ら35人が、1950年代以降の名作1157冊を厳選。 (7月2日)[全文へ]


評・角田光代(作家) 収められた五編の短編小説の語り手は、小学校教師、母親、四人家族の父、ひとり暮らしの老婦人、女性編集長とさまざまだが、すべての話はゆるやかにつながっている。 (7月2日)[全文へ]


評・岡田温司(西洋美術史家・京都大教授) ペーター・ツムトア、この著者の名前に一瞬の戸惑いを覚える読者もいるはずだ。誰あろう、これまでピーター・ズントーと表記され、多くの熱狂的なファンを集めてきたスイスの建築家である。おそらくは本人の意向か、まるで読者をはぐらかすかのように、慣れ親しまれた英語風の表記ではなくて、あえてドイツ語の表記が採用されている。これもまた、静かなる抵抗と強靱(きょうじん)な思考、熟練の技と研ぎ澄まされた感性の建築家ならではのことだ。 (6月25日)[全文へ]


評・中島隆信(経済学者・慶応大教授) 山口百恵といえば、実働8年足らずながら、芸能界に大きな足跡を残したスーパースターである。本書は、一見どこにでもいそうな少女だった彼女が芸能界入りしてから、その頂点に登りつめ、その後わずか数年で電撃的に引退するまでの軌跡を(つづ)ったものである。 (6月25日)[全文へ]


評・山内昌之(歴史学者・明治大特任教授) 法制史あるいは法史学は、過去の法制度や慣行、法の観念と思想を研究する学問である。連作で『日本国制史研究3』となる本書は、法制史の魅力と面白さを余すところなく伝えてくれる。 (6月25日)[全文へ]


評・朝吹真理子(作家) すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。――憲法第二十五条、生存権を、私たちは知っている。そして、それが守られていないという現実も知っている。お金がない、住む家がない、という理由で、死刑を望んで殺人する、自殺する人がいる。なぜ、生存権が保障されているはずのこの国で、生活苦を理由に死ぬ人が後を絶たないのか。 (6月25日)[全文へ]


評・杉山正明(ユーラシア史家・京都大教授) かなり前のことだが、故・江上波夫さんの御宅に参上して、お話しさせていただくことがあった。大陸から来た騎馬民族が大和王権を樹立したという騎馬民族渡来説など、なにかと話題になる方であった。その折、ふと江上さんが「四大文明」という考えを日本に広めたのは自分だよと、愉快そうに笑われた。私は率直に、長江・ガンジス・マヤ・アンデスなども「文明」で、ざっと挙げても八〜十個くらいはありますよとお答えした。ところが江上さんは、「四大文明」といったのは口調がいいからで、本当はいろいろあるさと大笑いされた。 (6月25日)[全文へ]


評・橋爪大三郎(社会学者・東京工業大教授) グラは四歳年下のウサギと友達になった。(うれ)しかった。父なし子と(さげす)まれ悪ガキにいじめられ、村に話し相手はいなかった。ウサギは生まれつき病弱で色白で背も伸びない。だからウサギ。その彼に「兄ちゃん」と慕われた。孤独な二人組だ。 (6月25日)[全文へ]


評・管啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) パリの服飾デザイナーが世界を旅し、出会った。各地の少数民族の伝統的な織物、染物、デザイン。美しい写真が旅を証言する。息を()む。花、植物、星、幾何学的パターン。なんという洗練だろう。各地の女性の装いが中心に紹介されるが、男たちも負けずにおしゃれだ。ファッションの基盤にあるのは生物学的なディスプレー(見せびらかし)だろうが、それは確かに人の目を引き、見とれさせ、心を奪う。 (6月25日)[全文へ]


評・池谷裕二(脳研究者・東京大准教授) 考古学の研究室に勤務する男女二人が殺された。各々の殺人現場には奇妙なマークが残されている。古代のペトログリフ(線刻)だ。関連した事件にも思えるが、二つのマークは時代も地域も信憑(しんぴょう)性も異なる。シンボルに託された謎を探りながら事件の核心に迫る、そんな推理小説だ。 (6月25日)[全文へ]


評・星野博美(ノンフィクション作家・写真家) 昭和後半に幼少期を送った人の中には、バイエルの教則本でピアノを習った人が多いだろう。私もその一人。バイエルと聞いただけで、応接間でカバーをかけられ丁重に扱われていたピアノや、音大出身の美しい先生を思い出し、甘ずっぱい郷愁に包まれる。 (6月25日)[全文へ]


評・管啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) 津波から一年余が経過した春の三陸沿岸部を車で走ってきた。海岸線の道は曲がりくねり波打ち新緑と海の青のあいだを美しくつづく。湾ごとに、入江ごとに、町があり集落があり、その大きな部分が途方もない破壊をこうむっている。志津川、雄勝、女川。()まっては黙し、海と空にむかって掌を合わせるばかりだった。 (6月18日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家) 「Kのことを書く。Kとは、ぼくの死んだ配偶者で、本名を桂子といった」。この一節が(ほん)(ぺん)の書き出しだが、作者はすぐに次の断りを入れる。「たしかに夫婦でありいっしょに暮したのだが、つまるところ、ぼくには、この人がよくわからなかった。共同生活者であったが、彼女はいつもぼくを立ち入らせないところがあって、ぼくは困った」、「Kは七十二年の生涯で、福井桂子名義の詩集を合計七冊書いた。死因は発見が遅れた(がん)である」と。 (6月18日)[全文へ]


評・橋本五郎(本社特別編集委員) 卓抜な「書き出し」である。死者・行方不明者10万5000人に及んだ関東大震災に「希望」を見いだす人と「絶望」を覚える人がいた。それぞれの代表が、譲り合いと相互協力の姿に希望を託した芥川龍之介であり、貧しき者がさらに苦しむことに怒りを覚え「革命」に()かれた清水幾太郎である。この書き出しで読者は一気に「戦前昭和」に引き込まれる。 (6月18日)[全文へ]

著者来店


 全国の主要な民謡259曲の歌詞、楽譜、歌の生まれた背景や歴史などの解説で構成する。採譜を担当した三味線奏者でもある共著者、千藤幸蔵さんが1月に急逝する無念を乗り越え完成させた、900ページを超える大著だ。 (6月26日)[全文へ]

『闇の伴走者』の長崎尚志さん

コラム

HONライン倶楽部


 環境問題、高齢化社会、女性と家族……。旺盛な好奇心で問題作を次々と発表しながら、有吉佐和子さんは53歳で急逝しました。しかし、その作品は古びるどころか、ますます現代性を帯びています。 (6月5日)[全文へ]

高峰秀子特集

空想書店


 私の本好きは、根っからというより、致し方なく、なのです。 (6月19日)[全文へ]

ポケットに1冊


 『孤高の人』など山岳小説で知られた新田次郎(1912〜80)にはたった1作、少年向けの小説があった。舞台は山ではなく海。代表作『八甲田山死の彷徨』を執筆した際に滞在した三浦半島が舞台の冒険小説である。生誕100年の今年、初文庫化された。 (6月27日)[全文へ]

コミック・マガジン

マンガは僕の友達だった


 山あいの温泉郷、九鬼谷に住む高校生の良太は同級生で幼なじみの月子に好意を持っている。高校生というものの早熟な良太は、月子に迫っては、いつもしっぺ返しをくう始末である。 (6月28日)[全文へ]

本こども堂

子どもたちへ


もりうちすみこさん 56 霊媒師は、亡霊(ぼうれい)と対話をして、様々なことを解決(かいけつ)するとされる人たちです。ある日、突然(とつぜん)、亡霊が見えるようになった女の子が、ちょっと(こわ)い出来事に()()まれる「ある日とつぜん、霊媒師」シリーズ(朔北社(さくほくしゃ))の第2(かん)恐怖(きょうふ)の空き家』が出版(しゅっぱん)されました。 (6月19日)[全文へ]




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編集者が選ぶ2011年海外ミステリー

海外ミステリーが傑作揃いだった2011年。各社担当編集者のベスト5を紹介します。

連載・企画

海外ミステリー応援隊【番外編】 2011年総括座談会
世界の長・短編大豊作…やはり新作「007」、「犯罪」不思議な味、北欧モノ健在(11月29日)

読書委員が選ぶ「震災後」の一冊

東日本大震災後の今だからこそ読みたい本20冊を被災3県の学校などに寄贈するプロジェクト

読売文学賞

読売文学賞の人びと
第63回受賞者にインタビュー

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