現在位置は です

本文です

「ドラゴン・タトゥーの女」(米、スウェーデン、英、独)

異形ハッカーの報復劇

 スウェーデンのミステリー「ミレニアム」3部作の第1部を、「セブン」のデビッド・フィンチャー監督が映画化。

 3部作は本国でも映画化され、これはそのハリウッド版だが、舞台はスウェーデン。フィンチャー監督独特の暗く湿ったような映像が、陰惨な物語によく似合い、サスペンスを盛り上げる。

 ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)は、40年前の少女失踪事件の調査を依頼される。依頼主はかつてスウェーデン経済界に君臨した大富豪。ミカエルは調査のため、天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ=写真)と組むことになる。鼻や口にピアスを付け、竜のタトゥー(入れ墨)を背負った異形の女である。やがて2人は未解決の連続猟奇殺人事件に行き当たる。

 富豪一族が住む島の、雪に閉ざされた陰気で美しい風景。物語も、虐待、殺人、ナチズムと、どこまでも暗い。だがその中だからこそ、リスベットのキャラクターは魅力を放つ。暴力に満ちた世界で育ち、武装するかのようにピアスやタトゥーを身に着ける彼女は、卑劣な男に対し、自らの流儀に従い報復を遂げる。マカロニ・ウエスタンのようなアンチ・ヒロインぶりが、物語を引っ張っていく。

 リスベット役のマーラは、攻撃的な外見の奥の壊れやすい内面も表現して、今年の米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。本国版で演じたノオミ・ラパスの方が印象は強烈だったが、フィンチャーの世界には、こちらの方が合っている。2時間38分。有楽町・TOHOシネマズ日劇など。(小梶勝男)

2012年2月10日  読売新聞)

 ピックアップ

トップ


現在位置は です