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『中国列女伝 三千年の歴史のなかで』 村松暎著

「悪女」を生んだ背景を探る

 とんでもない女性がいたもんだ――。一読後、最も印象に残ったのが、中国3大悪女といわれる漢の呂后(りょこう)、唐の則天(そくてん)武后(ぶこう)、清の西太后の3人だった。邪魔者を残忍に殺し、権力を独占する姿に戦慄を覚えた。

 だが中国文学者の著者が書いたのは、単なる悪女伝ではない。かつての中国の男尊女卑の仕組みと、女性がそれをどう受け止めて生きたかを描いたのだ。

 一夫多妻制のもと、女性は後継ぎを産んで初めてその価値が認められた。妻は亡夫にも貞節を尽くさねばならず、再婚を断るため鼻をそぎ落とした女性までいた。一方で夫の命に従い、辱めを受けても子供の養育を優先した妻は美談として語られる。そんな理不尽さの中で女性はたおやかに生きていたのだ。

 呂后たちが「悪女」になったのは、夫である皇帝の女性関係やだらしなさにも一因があった。読むほどに、女性を追い込んでいたのは男だったことに気づかされる。現代の日本でも、大臣が「産む機械」と発言したように、男尊女卑的な風潮は残っている。とんでもないのはどちらなのか、考えさせられる。(早)

 1968年、中公新書刊。34刷10万9000部。740円。

2011年11月30日  読売新聞)

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