『中国列女伝 三千年の歴史のなかで』 村松暎著
「悪女」を生んだ背景を探る
とんでもない女性がいたもんだ――。一読後、最も印象に残ったのが、中国3大悪女といわれる漢の
だが中国文学者の著者が書いたのは、単なる悪女伝ではない。かつての中国の男尊女卑の仕組みと、女性がそれをどう受け止めて生きたかを描いたのだ。
一夫多妻制のもと、女性は後継ぎを産んで初めてその価値が認められた。妻は亡夫にも貞節を尽くさねばならず、再婚を断るため鼻をそぎ落とした女性までいた。一方で夫の命に従い、辱めを受けても子供の養育を優先した妻は美談として語られる。そんな理不尽さの中で女性はたおやかに生きていたのだ。
呂后たちが「悪女」になったのは、夫である皇帝の女性関係やだらしなさにも一因があった。読むほどに、女性を追い込んでいたのは男だったことに気づかされる。現代の日本でも、大臣が「産む機械」と発言したように、男尊女卑的な風潮は残っている。とんでもないのはどちらなのか、考えさせられる。(早)
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1968年、中公新書刊。34刷10万9000部。740円。
(2011年11月30日 読売新聞)
- 『大名の日本地図』 中嶋繁雄著 (3月7日)
- 『巴里の空の下 オムレツのにおいは流れる』 石井好子著 (2月29日)
- 『動物化するポストモダン』 東浩紀著 (2月22日)
- 『スローカーブを、もう一球』 山際淳司著 (2月15日)
- 『国語入試問題必勝法』 清水義範著 (2月8日)
- 『ブリューゲルへの旅』 中野孝次著 (2月1日)
- 『天平の甍』 井上靖著 (1月25日)
- 『わたしが・棄てた・女』 遠藤周作著 (1月18日)
- 『心に太陽を持て』 山本有三編著 (12月28日)
- 『O・ヘンリ短編集』 大久保康雄訳 (12月20日)
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