ウソ見抜く力 養おう
「口コミサイト」不正書き込み
イラスト・スパイスコミニケーションズ(みくげ光星)
何かを食べたり使ってみたりした感想などの情報が、人の口から口へと伝わることを「口コミ」といいます。このような情報を書き込んだり見たりすることができるインターネット上の掲示板は「口コミサイト」と呼ばれていますが、感想ではなく、宣伝目的のウソも書き込まれていたことがわかって問題になっています。
人気の「食べログ」
「口コミサイト」は、飲食店やホテル、化粧品など、分野別にいろいろあります。お客として自分でお金を払い、実際に飲食店で食事をしたり、ホテルに泊まったり、化粧品を使ったりした人が、「おいしかった」「よかった」などと感想を書き込むというのが基本的な仕組みです。
本名を明かさずに書き込めるため、ガイドブックやお店の宣伝だけではわからない、お客の正直な感想がわかるのが便利な点です。そのため、行きたい店や買いたい商品を探すときに、口コミサイトを見て決める人が増えています。
宣伝目的の書き込みが問題になったのは、飲食店の感想を載せている有名な口コミサイト「食べログ」でした。店が業者にお金を払い、業者がお客のふりをして、書き込みをしていたのです。
もんじゃ焼き店がたくさん集まる東京・月島では、いくつかの店が業者に書き込みを頼んでいました。これでは、業者に書き込みを頼んだお店は、たとえおいしくなくても「おいしい店」として人気があるように紹介されてしまいます。それを見て行ったお客ががっかりしたら、月島全体の評判が落ちてしまい、まじめに努力しておいしいもんじゃ焼きを出しているお店にも悪い影響が出かねません。そこで、もんじゃ焼きの店主らで作る組合は、業者に書き込みを頼むのをやめるようお店に求めました。
ヤフー知恵袋でも
ほかにもインターネット上の掲示板「ヤフー知恵袋」で、業者がお客のふりをして書き込みをしていたことがわかりました。この掲示板は、だれかが書き込んだ質問に、別の人が答えを書き込む仕組みです。しかしある業者は羽田空港の飲食店に依頼されて、掲示板に「羽田空港でおすすめの店はどこですか」と質問を書き込みました。そして「この店が一番いい」という答えも自分で書いて、依頼された飲食店を薦めていたのです。
こうした口コミサイトにお店の宣伝を書き込むことは、「普通のお客さんはどう思っているか」が知りたくて見に来た人たちを裏切る行為です。不正な広告にあたるおそれもあるとして、消費者庁では調査を始めました。
インターネットで流れる情報の数や種類はどんどん増えています。情報を出す人の名前を明らかにして責任を持って流されている情報もあります。一方、匿名で書き込むことができる口コミサイトでは、その情報を誰が出しているかが分からないのをいいことに、本当は食べていない料理を「おいしい」と書き込んだり、逆に、お店の悪口をわざと書いたりする不正が起こりやすくなっています。これからは、どの情報が本当で、どの情報がウソなのかを見抜く力も求められています。
(2012年2月7日 読売新聞)