現在位置は
です

フード&スイーツ

列島まるかじり 一覧へ

本文です

黒い皮と緑の餡が持ち味の異色の大福

黒い色の秘密はアントシアニン

黒米を加えて作った餅はムチッとした食感が持ち味

 取り引き先から「黒米じんだん大福」をいただいたことがある。1箱に20個とたっぷり入ってるので職場で配ることにしたのだが、なぜかみな困惑顔だ。理由は、大福なのに黒いから。「黒米を使っているからね。中身は緑。ほら」と二つに割ると、枝豆をつぶして作った緑鮮やかなじんだん餡。そのコントラストにますます驚いていた。

 黒米は古代米の一種で、アントシアニンを含む米のことを言う。江戸時代の食の蘊蓄本『本朝食鑑』には、程よい歯ごたえに炊き上げた白米の次に、軟らかめの黒米(と赤米、紫米)が好まれる、と書かれている。今では雑穀の一種のように扱われているが、戦前までは東北地方や西日本の内陸部などでよく栽培され、農家などでは日常的に食べられていたそうだ。

 黒米のことを調べるうちに、最近色つきの野菜をよく見ることに気づいた。紫タマネギ、パプリカ、オレンジ色のさつまいもetc. いったい何のために米や野菜は色を身にまとうのだろう。例えば黒米のアントシアニンは紫外線から遺伝子を守るためだという説があるが、科学的にはっきりと解明されたわけではない。でもきっと黒米が種を存続させるのに役立つ何らかの理由があるはずで、そう考えると食材が持つ色に神秘を感じたりするのである。

 さて、「黒米じんだん大福」の色合いに躊躇していた職場の面々は、素材由来のものだと知ると、「いただきま〜す」と次々と手を伸ばしてきた。黒米を加えた餅はムチッと力強いコシが持ち味で、ほんのり香ばしい。じんだん餡も含めて全体的に甘さは控えめ。しつこい後味がないので、もう一つ食べたいなと思ったら……時すでに遅し。このおいしさに気づいた同僚たちに食べ尽くされた後だった。う〜ん、残念。(ライター/棚田みよ子)

参考文献
『明日はもっと元気 雑穀のちから』永山久夫(著)、一二三書房
『体と血液を元気にする 黒い食べもの健康法』永川祐三(監修)、主婦と生活社
『そだててあそぼう91 赤米・黒米の絵本』猪谷富雄(編)、スギワカ ユウコ(絵)、農山漁村文化協会

おすすめ!
ぜひご賞味を! 「黒米じんだん大福」
全国各地から美味しい便りをお届け  
2011年12月26日  読売新聞)
現在位置は
です