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インタビュー

素材にデザインの命…河合吾郎さん(はちや取締役常務、デザイナー) 

「初めての買い付けでは、相手にされなかった。悔しくて何度も通ううちに、業者との信頼関係ができました」(東京都港区の「麻布十番店」で)=和田康司撮影

 「気に入った生地は、とにかくどんどん買っちゃうんです。使い道が決まらずに、何年も倉庫で眠っているものも結構あるんですよ」

 バッグブランド「シンクビー!」を展開する「はちや」(大阪)の取締役常務でデザイナーの河合吾郎さん(35)はそう言って笑った。

 実は、そんな「余り物」からヒット商品を生み出すのも、河合さんの得意技だ。

 例えば、2004年発売の人気シリーズ「アニマルハート」。1998年、ミラノ郊外で仕入れたヒョウ柄の生地は、バッグのデザインが決まらず結局お蔵入りに。数年後、色とりどりの生地をハート形にカットしていた時、ふと思いついてこの生地の上に置いてみた。すると、いかにも若い女性の心をとらえそうなかわいらしいデザインに。「社として空前のヒット商品」となり、今ではブランドの定番になった。

 「素材と素材、色と色の組み合わせは、ひらめきが命。素材が良ければ、いつかそれにぴったりのデザインが浮かんでくるんです」

 同社は、初代社長で河合さんの曽祖父、梅次郎さんが1898年に足袋を扱う商店として創業。シンクビー!を始めたのは1977年だが、河合さんがデザイナーに就任し、そのポップなデザインが人気に火を付けた。当初は卸売りとネット通販だけだったが、2006年には初の直営店を大阪市内に開き、現在は、東京、九州を含み6店舗を構えるまでになった。

 子どものころから、会社で生地の裁断などを手伝い、学生のころからヨーロッパ各地で生地を買い付けてきた。家業をつぶさに見てきただけに、社員は家族のようだ。銀座店(東京)や麻布十番店(同)は、内装のほとんどを河合さんと社員の手で仕上げた。

 「デザイナーっていう自覚はないんです。好きな物を、好きな仲間と作っているだけ」。もの作りにかける情熱が、そのまま社員とのきずなにもなっている。(塚原真美)

◇週5日は銭湯通い 湯船で創造の時間

 少なくとも週5日、銭湯に行く。大阪の自宅近くには行きつけが4か所。平日は仕事が終わってから、休日も深夜に、いずれかの銭湯を目指す。

 サウナと水風呂を往復すること2回。暑さと冷たさの単調な繰り返しが、考えに適度な刺激を与えてくれる。

 「風呂に入っている間に、頭の中で作品展を開くんです。商品の80%は、この時に出来上がる。あとはそれを形にするだけ」

 時間帯のわりにお客は結構多いが、会話を交わすことはない。人がいても一人になれる。「だれにも思考をじゃまされない」第二の仕事場だ。

 アイデアは、会社にいても出てこない。オフこそ創造の時間なのだ。

【月曜】

 午前 オランダでの生地買い付けリストのチェック

ハサミとともに、大型のホチキスは必需品。生地の仮留めに使う
本社にあるアトリエは、お気に入りの小物でいっぱい。リラックスできる場所

 午後 英国のバレエ団との協業作品の企画会議

【火曜】

 午前 新作バッグのサンプル作製を職人に指示

 午後 翌日の展示会に向け、会議で最終確認。夕方、展示会のため、東京へ

【水曜】

 朝、展示会場をチェック。その後、終日展示会で取引先と商談、商品説明などを行う。合間に、英国の美術館との協業作品について会議

【木曜】

 終日、展示会。夜に大阪へ

【金曜】

 午後 広告の資料として、新作の特徴を説明した映像を撮影。夏の新作の企画について会議、ちらしのデザインを打ち合わせ

【土曜】

 午後 大阪店の商品ディスプレーをチェック。新作サンプルの仕上がりをチェックし、修正を指示

【日曜】

 友人と大阪市内で映画観賞。その後、食事へ

かわい・ごろう 1976年、大阪市生まれ。98年、ロンドンの美術学校卒業。同年、はちや入社、企画・製造管理部門でバッグの製造、デザインなどを担当。2008年から現職。

2012年2月7日  読売新聞)

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